第29話
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であるな!!」
「冗談……なのね」
「!?」
両手を胸の前で合わせ俯く華琳。『乙女心を傷つけた名族の図』完成である。
ここまでくると冷や汗を通り越し、脂汗が流れ始める。先程とは違い、今は前方からも怒気が溢れている。
前方――春蘭、秋蘭を始めとした華琳の家臣達だ。
「お、おい華琳……早く誤解を解かねば我が身が――!?」
ついに自分の手に負えなくなったこの状況を打開するため、それが出来るであろう華琳に袁紹は話しかけ――気が付いた。
彼女の肩が小刻みに震えている。笑いを堪えているのだ!
そして、傍から見れば主が涙を流しているようなその構図に、彼女を最も敬愛していると自負していた春蘭が――弾けた。
「何はともあれ久しぶりだな華琳。元気そうでなによりだ」
「ええ貴方も……とは言えないわね」
ボロッという擬音が聞こえてきそうな袁紹の姿を見て、華琳は楽しそうに笑う。
先程は大変だった。臨界点を突破した春蘭が掴みかかることに始まり、それを止めようと、彼女と掴み合いを始める猪々子。二人をみかねて参戦した斗詩と秋蘭。
その騒ぎの渦中にいた袁紹は、豪華な服や自慢の髪に埃をつけ。見た目のギャップもあり、間抜けな格好になっていた。
「フム、何のことかな?」
「……え?」
そんな袁紹の『らしくない』姿を笑っていた華琳は。次の瞬間、目を見開いた。
何と袁紹の姿が元通りになっていたのだ。先程まで埃を被っていた迷族の姿は無く、そこにいるのは紛れも無い袁家の現当主。威風堂々とした名族であった。
「貴方、いつのまに妖術を使えるようになったの?」
「フハハハハ! 名族の威光があれば、埃のほうから離れるのだ!!」
――答えになってない。そう華琳は胸中でツッコミを入れる。
「おそろしく速い動作、アタイでなきゃ見逃しちゃうね」
大刀を背負っている娘がしたり顔で呟いているが。袁紹軍の面々は、覇王の娘が首を傾げている答えを知っていた。
その答えの前に一旦話しは逸れるが、袁紹の能力が高いことはもはや語るまでも無い。
その袁紹がさらに能力を飛躍的に上げる事象があった。彼の『こだわり』である。
顕著な例を挙げるとするならば、彼の理想。『満たされる世』実現の為にこれまで行ってきた政策の数々や、黄巾の乱における、人命を優先した大計略などである。
その他にも人材勧誘、南皮の拡張、魚醤とそれにまつわる商売など、彼が『こだわり』を持って行うことは、ことごとく成功させてきた。
上記だけを見れば万能な能力だが、実は無駄に発揮される事のほうが多かった。
その代表的な例は『御輿』だろう。なんの変哲も無い御輿とその担ぎ手達も
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