第29話
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
第29話
「貴方達は荷を降ろして頂戴。そこの人たちは各隊の天幕の準備を、それから――」
「程c隊はごはんの準備です〜。はやくしないとお腹を空かせた野獣呂布・文醜に食べられるですよー」
「麗覇様、他にご入用な物はありますか?」
「うむ、我が天幕とは別に大き目の物を用意して欲しい」
「大き目の天幕……畏まりました」
連合の陣地に到着した袁紹は、逸る気持ちを抑えつつ桂花達と共に指示を飛ばしていた。本来ならすぐにでも妹の顔を見に行きたいところだが、彼には総大将としての仕事がある。
「失礼します。曹操様とその家臣達が来ておりますが、いかが致しましょう?」
「真か!? あ、いや……此処に案内を」
「ハッ!」
華琳の到着を知らされ、数瞬顔を輝かせ――引き締める。
家臣の目の前では、名族として威厳をもった当主でありたいと願っている。最も、ほとんどの家臣達は彼の二面性を知っているので、今更肩に力を入れたところで余り意味は無かった。
「お久しぶりで御座います袁本初様、多忙の中私達のために時間を割いて頂き――」
「や、止めよ華琳! お主のその言葉使い、何処か恐怖を感じるぞ!!」
袖口を引きながら「見よ、鳥肌が立っておる!」と訴えかけてくる袁紹を見て、華琳は満足そうに微笑む。
奇襲は成功である。
「あら、『親しき仲にも礼儀あり』でしょう?」
「それは社交界の場だけでよい。此処には我とお主、その家臣しか居らんのだぞ……」
「ふふふ、冗談よ」
「華琳の冗談は心の臓に悪いものばかりだ……とは言え」
袁紹は両腕を大きく広げる。
「良く来た華琳! 我はお主を歓迎する!!」
「ありがとう……それで? その格好には何か意味があるのかしら?」
両腕を広げたまま制止している袁紹に華琳は訝しげに尋ねた。始めは大げさに歓迎を表現するためかと思っていたが、何か意図があるようだ。
「歓迎の抱擁である! 我が友華琳なら、これを受けるに値するぞ!!」
「…………」
案山子のような格好の理由がわかった華琳は、一瞬目を丸くし、素の表情に戻る。
「結構よ、私はそこまで安くないの。それに――」
袁紹の背後に視線を移し、口を開く。
「……命が惜しいもの」
「む?」
その言葉に袁紹は、今まで華琳に向けていた意識を自身の背後に向けた。背後、袁家自慢の将達である。
――後ろを振り向けん!
彼の背後から漂ってくるのは、殺気に近い怒気であった。誰が発しているかなど考えている余裕も無い。袁紹は冷や汗を垂らしながら、事態を収束させようと口を開いた。
「ふ、フハハ! 我が名族冗談を見切るとは、流石華琳
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ