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ギゼンシャ
2章

[8]前話 前書き
彼女は何故か一人で掃除をしていた。机を運び、箒で床を掃いて、黒板を消す。そうした行動を一人でしている笹内さんはいかにも大変そうで他の人達はどこに行ったのだろうと思った。しばらく彼女の様子を見ていると彼女のほうが僕の方に気が付いたようでこちらに駆け寄ってきた。
「桐原君どうしたの、こんな時間に?」
彼女は僕の名前を覚えていたようだった。
「僕は今まで補習を受けていたんだ。そういう君はどうして一人で掃除していたんだ?」
彼女は少し下を向いて答えた。
「私以外の人は用事があるといって帰ったわ。といっても今まで一緒に掃除をしたことはないのだけれど。」
そして彼女は悲しそうな笑みを浮かべた。
「私はこの教室の中では一人ぼっちなの。」
彼女は仲の良い人がいないから他の人からいろいろ押し付けられていることを語ってくれた。
なぜ彼女は人を頼ろうとしないのだろう。人に物を頼むのが苦手なのだろうか。
「それなら誰かに手伝ってもらえばいいじゃないか。僕で良かったら手伝うよ。」
僕は少しでも彼女を助けれればと思いそう言った。
すると彼女は
「っ…、大丈夫もうすぐ終わるし、桐原君は帰ってて。」
本人にそう言われるとどうしょうもない。僕は机の中から忘れ物を取り出すと教室を離れた。
家に帰ってご飯を食べ、風呂に入り、ベッドにはいり横になっても僕が思い出すのは教室で一人で掃除する笹内さん、そして
「っ…、大丈夫もうすぐ終わるし、桐原君は帰ってて。」
と言ったときの哀しそうな彼女の顔だった。どうして彼女は人にたよろうとしないのだろう。それに何であんな哀しそうな顔をしていたんだろう。そんな思考をしながら僕は意識を手放した。




何故彼にあんなことを言ったのだろう。彼はクラスメイトというだけの存在でこれまで一度も話したことがなかった。もしかすると彼に何か期待をしていたのだろうか。例えば今の自分を救ってくれたりもしかしたら自分の過去も…
「いえ、そんなことあるはずないわ。」
そう自分に言い聞かせるように呟くと笹内万里は掃除を終え、帰路に着いた。
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