第165話 復讐の顛末 後編2
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」
蔡平は力無く伊斗香に答えた。蔡平の「父さん」の言葉を耳にした伊斗香は悲しい表情に変わった。憎悪した父だが、心のどこかでは父を求めていたのかもしれない。
「そうか」
伊斗香は短く答えると蔡平を解放した。
伊斗香と蔡平の間に沈黙が広がる中、馬蹄の音が彼女達に近づいてきた。
「ん? 正宗様!?」
伊斗香は馬蹄の音に視線を移すと驚いた表情片膝を着き拱手した。伊斗香に近づいてきた騎乗する人物は正宗だった。正宗は伊斗香の様子を見た後、側にいる蔡平に視線を向けた。そして視線を周囲に向けた。側に転がっていた死体に視線を向けると瞑目した。
「蔡平、復讐を果たしたようだな」
正宗は下馬すると蔡平に近寄った。蔡平は正宗の言葉に反応しなかった。彼女の態度に伊斗香は何も言わなかった。
「後悔しているのか?」
蔡平は何も答えなかった。正宗は俯く蔡平を見つめた。
「お前自身が選んだ道だ」
正宗は神妙な表情で蔡平に言った。
「何で。何で私ばかりこんな目に遭わなくてはいけないんですか?」
蔡平は顔を伏せたまま徐に正宗に問いかけた。
「お前が望みお前が選択した。それだけだ。お前は蔡仲節を殺すことを望んだ。違うか?」
「違いません。でも分からなくなりました」
蔡平は小さな声で正宗に答えた。
「私は復讐のために生きたことはない。だから、お前の気持ちを理解できない。だがなただ一つだけ言えることがある」
正宗は一拍置いて視線を蔡平から逸らし虚空を見つめた。
「蔡平、生きろ。人はいずれ死ぬ。だがお前の奪った命はお前の意思で殺し死を選ばされたのだ。お前は奪った命の代わりに精一杯生きなければならない。お前が死を選べば、死んだ命は無駄に死んだことになる。生きて。生きて。そして、お前自身で生きる理由を見つけるのだ」
正宗の瞳は哀しい感情が籠もっていた。蔡平は正宗の言葉に嗚咽を漏らし泣いていた。正宗は蔡平を凝視した後、伊斗香に視線をやり去ろうとしたが背を向けたまま歩みを止めた。
「蔡平、今は泣きたいだけ泣けばいい。そして、それでも死にたいと思うなら死を選ぶのもお前の道だ。だがな死ぬ覚悟があるなら、この私に命を預けてみないか。私には大望がある。それを支えてくれる者達を必要としているのだ。私はお前にその一人になって欲しいと思っている」
正宗は自分の気持ちを蔡平に告げると今度こそ去って行った。
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