第165話 復讐の顛末 後編2
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た時とは違い、確実に相手を絶命する一撃だった。蔡仲節は目を向き出しにし視線だけを蔡平に向け、蔡平を確認すると白目を向き脱力した。蔡平は確実に命を刈るために剣を更に突く。
蔡平は蔡仲節の死を確認すると剣を勢いよく抜き、よろよろと背後に二三歩下がった。そして、力無く膝を着き脱力したように座った。
「殺した」
蔡平は小さい声で笑いだした。その声は力無い声だった。復讐を遂げた勝者には似つかわしくない声だった。
「殺した」
蔡平は視線を地面に落とし小さい声で囁いた。
「父さんを殺したよ。母さん」
蔡平ははじめて蔡仲節を「父さん」と呼んだ。伊斗香の前でも正宗の前でも「あいつ」と呼んでいた蔡平。彼女の中で何かが崩れた落ちた瞬間だった。
「みんないなくなった」
蔡平は誰憚ることなく涙を流し月の輝く空を見つめていた。
「どうして私だけこんな目に遭わないといけないのかな」
蔡平は目を落とし蔡仲節を殺した血に汚れた剣に視線を落とした。彼女は剣をしばらく見つめていたが、徐に剣の刃を首元に持っていこうとした。
その時、どこからともなく矢が飛んできて、蔡平の手に持つ剣が落ちた。
「お前は何をしているのだ!」
伊斗香だった。彼女は弓を手に持ったまま馬から降りると蔡平に駆け寄った。そして、蔡仲節の死体を一瞥すると乱暴に首元を掴み蔡平を持ち上げた。蔡平は伊斗香に逆らうでもなく、成されるままに立ち上がった。
「蔡平、何をしているのだと聞いている」
蔡平は何も言わずに目を伏せていた。
「死ぬつもりだったのか?」
伊斗香は蔡平を睨みつけた。蔡平は何も返事しなかった。
「お前は清河王に多大な恩があるはず。恩の一つも返さずよく死のうなどとよく思ったものだな。清河王に申し訳ないと思わないのか!」
伊斗香は蔡平を乱暴に揺すったが蔡平は抵抗せず何一つ言わなかった。
「復讐を成就し腑抜けになったか。お前は何のために復讐をしたのだ?」
伊斗香は蔡平に自分の気持ちを投げかけた。蔡平は伊斗香の言葉に反応せず視線を落としているだけだった。
「清河王はお前を見抜いておいでだった。私もお前が自らの存在意義を復讐のみに置いていたこと知っていた。それでも清河王はお前に目を掛けてくださった。お前など捨て置くことも出来たのだ。それでもお前を見捨てず願いを聞き届けてくださった。お前は何も思わないか!」
伊斗香は感情を荒げ蔡平に語りかけた。沈着冷静ないつもの伊斗香と違った。
「生きていて何になるんだ」
蔡平は小さな声で伊斗香に短く答えた。
「皆死んだ」
蔡平は小さく笑い声を上げ自嘲した。
「皆死んだ。母さんも爺さんも婆さんも。そして父さんも
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