第165話 復讐の顛末 後編2
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惑しているようだった。
「朱里殿、そう何度も使える手ではないと思います。蔡徳珪は自らが率いる兵は直参で固めているようでした。それでも我が軍の兵士の練度とは比べるまでもないですが」
朱里は桂花の話を聞くと納得したように頷いていた。
「まさかとは思うが、蔡徳珪が暗殺者をこの近辺に残していったやもしれん。不審な兵士がいないか速やかに確かめておいてくれ。私は伊斗香達を追う」
「かしこまりました」
朱里と桂花は揃って正宗に拱手し去って行った。それを確認すると正宗は少数の騎兵を供回りとし馬を走らせた。
正宗が蔡瑁軍の襲撃を蹴散らした頃、伊斗香と蔡平達は騎兵五十騎歩兵二百を率い逃亡した蔡一族を追っていった。ここまで来る間に足の遅い老人や子供とその母親は彼らによって殺されていた。残るのは蔡平の父を含めた数名の男達だけだった。
「いいか! 見つけ次第殺せ! 決して逃す出ないぞ!」
伊斗香は険しい表情で部下達に叱咤し、蔡平に視線を向けた。蔡平は馬術の心得がないためか歩兵を引き連れ走って移動していた。
「蔡平、お前も覚悟をしておけ。手柄を他の者に奪われるやもしれんぞ。お前の引き連れる歩兵に手分けして探させるのだな」
伊斗香は厳しい表情で蔡平に言った。暗に蔡仲節に復讐したいなら早く見つけて殺せと言っていた。蔡平も彼女の言葉の真意を汲み取り慌てて彼女に駆け寄った。
「あいつは私に殺させてください!」
蔡平は伊斗香に必死に訴えた。
「甘ったれるな!」
伊斗香は蔡平を睨み付け蔡平に怒鳴った。
「蔡仲節に復讐したくば自分で奴を見つけさっさと始末しろ! それが出来ないというならお前に運が無かっただけのことだ!」
伊斗香は蔡平を一瞥すると部下に声をかけて先を急ぐように馬を走らせた。その後ろ姿をしばし見ていた蔡平だったが、剣を握る手に力を込め月光が射す夜の街道に視線を向けて走り出した。少し進んだところで蔡平は部下の兵士達に蔡仲節を探すように命令を出し別行動をとった。
蔡平は夜陰に目を懲らし血眼で蔡仲節を探していた。すると風がないにも関わらず葉擦れの音が背後から聞こえた。彼女が音の聞こえた方角が視線をやると、そこには木々が密集し草が生い茂っていた。彼女は剣を構えゆっくりと近づいていった。
「出て来い!」
蔡平は警戒した様子で叫んだ。また、草擦れの音がしたかと思うと人影が背を向けて走って逃げ出した。背格好から見て成人した男であることは間違いなかった。蔡平は男を追いかけた。
しばらくして男は足を地上に露出した木の根に足を引っかけ無様に転けた。蔡平が見逃すわけもなく、じりじりと警戒しながら男との間を詰めていった。
「待て!」
男の顔が月明かり
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