暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
龍皇の遺産
龍皇の遺産 02
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に二つの恩恵をもたらす。
 まず一つに相手の間合いに入らずに攻撃が可能と言う、明らかに卑怯な安全性。 もう一つが、長い柄の先に刀身がある……端的に言えば重心が先端に集中しているが故の、遠心力による攻撃速度と火力の両立。

 「ぜ、やあっ!」

 僕の絶大な敏捷値にものを言わせた、凄まじい速さの斬撃。 そこに遠心力が加わって瞬間的な火力を押し上げると同時に、速度にまで補正がかかる。
 それは、余裕のタイミングで構えられた大剣の防御を軽々と無視して龍皇の身体を浮き上がらせる。 もっとも、浮き上がったのは一瞬で、吹き飛ばすまでには至らないけど、その隙に僕は雪丸を引き戻して切っ先を龍皇に向けた。

 身体は左足を前に出した半身。 柄頭側の手を右足の付け根に、切っ先を龍皇の鳩尾に。 攻守共に転じやすい、いわゆる中段の構え。

 崩された体勢を立て直した龍皇は、僕を紅蓮の大剣で薙ぎ払おうと一歩踏み出すけど、そんな単純な接近を僕が見逃す道理はない。

 「残念だけど」

 踏み出したばかりの右足を一閃。 継いで、右足に斬撃を受けて動きを鈍らせた龍皇の、左腰辺りから右肩口に向かっての振り上げ。

 「あなたの剣は僕には届かない」

 静かに言いつつ、僕は雪丸を振るい続ける。

 どれだけ紅蓮の大剣が大きかろうと、雪丸の前ではさしたる意味もない。 僕に攻撃を当てようと思えば接近するしかないけど、接近する前に雪丸の刃が龍皇の身を削る。 ソードスキルを使わない攻撃は、それでも着実に龍皇のHPを微々たる速度で喰い続けた。

 「龍人形態がもう少し大きければ、あるいは勝ち目もあっただろうね」

 あるいは僕の間合いを超える一撃があれば、きっと僕を退けるくらい簡単にできただろう。
 でも、これが現実だ。

 巨大な龍の姿であればアマリのディオ・モルティーギの餌食だし、龍人の姿であれば僕に削り殺される。
 結局、どちらであれ龍皇の死は確定だった。

 「本当に残念だよ」

 僕の言葉に反発したのか、それともジリ貧の現状を打開しようと目論んだのか、果たしてどちらなのかは分からないけど、龍皇の持つ大剣の紅色が一際鮮やかに輝く。

 ソードスキル発動のエフェクト。

 大剣を片手で高々と掲げるその構えを僕は知らない。 ボスモンスター専用のソードスキルだろうそれは、きっと必殺の威力を有しているはずだ。 龍皇の筋力値による一撃を受けてしまえば、紙っぺらのような防御値しか持たない僕のHPなんて一瞬で消えるだろう。
 軌道の分からない初見のソードスキルを完全に回避するのは至難だ。 だからこそ僕は、後退することなく雪丸を紅蓮の大剣の切っ先に突き出す。

 ソードスキルが発動する直前、雪丸の刃は狙い違わず大剣の先を突いた。
 
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ