プロローグ
[2]次話
「……我が神話も衰えたものだ。己が姿も見えぬほどの蒙昧が、このアジ・ダハーカに挑むとはな。
愚か也や卑小なる者よ。善神や人間ならばいざ知らず、同族とでも呼ぶべき魔の者である己が、誰を相手にそのような口を開いたのか、身を以って後悔してみるか?」
大いなる異形が、嘲りと侮蔑と親愛とを込めて語ります。
ヒトでも獣でもなく、既に魔と呼ぶにもおこがましいその醜悪極まる姿は、矮小な人間の口を借りずとも邪神と呼ぶにふさわしいものです。
神話に於いては千の魔法を操り、神界のあらゆる敵対勢力を虐殺し尽くした邪悪の化身。あらゆる悪の根源として生み出されたのがこの、龍の姿を思わせる異形『アジ・ダハーカ』です。
目にすれば朽ち、口にすれば呪われ、耳にすれば死は免れず。
その存在を知識とするだけで生涯を苦痛の中で過ごすことになる……そんな存在です。
───その邪神に相対する者がひとり。
たったひとりの、どこからどう見ても弱々しく見える幼気な少女が、邪神を目の前に、腕を組んでふんぞり返っていました。
過去、神人問わず、どんな英雄すら恐怖と畏怖、絶望を懐かずにはいられなかった異形を相手に、彼女は獰猛に笑いながら中指をおっ立てました。
「ごっちゃごちゃ喧しいぞクソ老害。まだ寝惚けてんのか。テメーの敗因は、アタシを目にした瞬間に殺し潰さなかったことだ。もう決着はついてんのさ。
いいか? こりゃ『下克上』だ。ジャイアント・キリングぶちかますっつってんだよジイさん。
ジジイはジジイらしく、若者にその座を明け渡してさっさとおっ死ね。遺す言葉もナニもいらねぇ───アタシはアンタより強い。そこわかっとけ、な?」
そう舌を廻す少女もまた、ヒトではありませんでした。
血液を思わせる真紅の髪。
魔法式の描かれた両の灼瞳。
背中から雄々しく生える麗しき黒翼。
主軸となる格好こそ人間のそれです。けれどそれ以外の要素が、彼女が魔に属する存在だと主張しています。
「くくく……ふぅあっはっはっは!
これだから歴越えは堪らん! いついかなる時代にも蛮勇に駆られた愚か者が必ずおるものよな! よかろう小娘よ、心してその矮躯を躍らせろ。我を愉しますことができればあるいは……命のひとつ、繋ぐことが可能かもわからんぞ?」
「あーうるせーうるせー。そんなセリフはもう聞き飽きてんだこっちは。なにしろ、
───木っ端魔王どもに続いて、もうテメェで本日4匹目だかんな、クソ雑魚邪神野郎」
「何……!?」
「二度は言わねぇからよぅく聞いときな。いいか?
史上に類なき最高の魔女、パチュリー・ノーレッジ様の使い魔は───
天上天下に最強無双なのさ!」
[2]次話
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