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戦国異伝
第二百二十九話 隠されていたものその十二

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「織田信長を討つ」
「どうやら嫡男の織田信忠も入りますが」
「共に、ですな」
「討ちそして」
「織田家そのものをですな」
「倒すのですな」
「好都合よ」
 焦りながらもだ、老人の声はこうも言った。
「織田信長、そして嫡男の織田信忠も討てば」
「主だけでなく跡継ぎも同時に失った織田家は瓦解しますな」
「後は天下を巻き込んで大いに乱れます」
「さすれば我等の世に戻りますな」
「戦乱の世に」
「その通り、どちらか片方を討っても意味はない」
 信長か信忠、どちらかだけではというのだ。
「織田信長だけを討ってもじゃ」
「後に織田信忠が立つだけですな」
「あの者も中々の出来物」
「天下人になればやはり我等に仇を為します」
「そして織田信忠を討とうとも」
 信長だけを討ったのとは逆の場合についても話された。
「織田信長がいれば」
「別の跡継ぎを立てますな」
「次男の織田信雄は不出来と聞いていますが」
「他にも子はおりますし」
「優れた者が新たな跡継ぎになればですな」
「やはり同じこと」
「しかし二人を共に討てば」
 その場合はとだ、周りの者達も話した。
「その時はです」
「織田家は柱がなくなります」
「主も跡継ぎもいなくなれば後はどうしていいかわからなくなります」
「それで織田家は乱れる」
「そこから再び天下が乱れる」
「我等はそこに持って行くのですな」
「そして我等も兵を挙げ」
 ここでだった、挙兵の話が具体的になった。
「天下が乱れたところでさらに乱し」
「天下がまた血が多く流れる混沌の世とし」
「我等が天下を乗っ取り我等の世とする」
「我等魔界衆の」
「左様、我等闇の者達のな」 
 まさにその世にするというのだ。
「まつろわぬ者達のな」
「その正念場ですな、まさに」
「いよいよ」
「ここで我等が兵を挙げる前に」
「織田家を崩し天下をまた乱し」
「そしてこの国を裏から乗っ取り」
「我等の血と混沌の世にするのですな」
 こうしたことを話してだった、そのうえで。
 老人の声は今度はだ、周りにこう言ったのだった。
「その操る者じゃが」
「はい、どの者でしょうか」
「それで」
「都に近くすぐに行ける者じゃ」
 それがというのだ。
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