第二百二十九話 隠されていたものその九
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「暫く振りですな」
「いや、慶次御主は最近まで都におったであろう」
可児がこう慶次に言う。
「岐阜に行く様に命じられるまでな」
「うむ、都はよい」
慶次は可児に応えこうも言った。
「賑やかでのう、だからあそこにおってな」
「日々遊んでおったのじゃな」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「政なぞわしの性に合わぬからのう」
「だからか」
「都で日々遊んでおった、しかしな」
「こうしてじゃな」
「岐阜に来た、それでじゃ」
「都に入るのは暫く振りだというのか」
「そうじゃ、だから楽しみじゃ」
こう可児に言うのだった。
「これからな」
「それはわしも同じじゃ、しかしな」
「しかしか」
「わしは御主の様に思いきり傾いてはおらん」
傾奇者ではなくだ、可児は武芸者だ。だから遊ぶことにかけては慶次よりは一歩も二歩も後になっているのだ。
「だから日々修行をしておった」
「岐阜に入るまでじゃな」
「そうしておった、しかしな」
「上洛じゃな」
「若し奇妙様に何かをする者がおれば」
その時はというのだ。
「わしが指一本触れさせぬ」
「奇妙様、何かありましたら」
慶次は信忠に陽気に言った。
「それがし達にお任せを」
「頼むぞ」
「はい、それがし達にです」
「わし等もいるからな」
ここでだ、飛騨者達が出て来た。煉獄が彼等を代表して言って来た。
「いざという時は頼りにしてくれよ」
「そうじゃな、御主達もおる」
「だからだよ」
それでとだ、煉獄は不敵な笑みで述べた。
「大船に乗ったつもりでいろよ」
「奇妙様は二条城に入るのよね」
萌は信忠にこのことを問うた。
「あのお城なら誰が攻めてきても大丈夫だよ」
「二条城ならか」
「あのお城のことは私達もよく知ってるから」
それで、というのだ。
「守りも硬いし抜け道もよ」
「そのこともじゃな」
「全部知ってるからね」
「万が一の時は」
拳も言う。
「我等が足止めをしますので」
「後は逃げてくれよ」
また言う煉獄だった。
「安全な場所までな」
「わかった、しかし」
「それでもかよ」
「それは皆も同じじゃ」
煉獄達もというのだ。
「皆死ぬな、何かがあってもな」
「それでもかよ」
「うむ、死ぬな」
こう言うのだった。
「皆で難を逃れようぞ」
「わかったぜ」
煉獄が笑ってだ、信忠に応えた。
「じゃあお館様も慶次さん達も俺達もな」
「うむ、何があろうともな」
「皆で難を逃れようぞ」
こう約すのだった、信忠も手配を整えていた。そして。
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