第二百二十九話 隠されていたものその七
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「安堵されたので」
「それでか」
「二郎三郎様は駿府に残られ」
「竹千代自身はじゃな」
「主な家臣の方々と共にです」
堺を見物したいというのだ。
「それで上様にお許しの伺いをと」
「わかった、よいがじゃ」
「よいがといいますと」
「竹千代にも話しておくか」
幼い頃から共に知っており長い間盟友同士であり今は織田家を除いて天下第一の家の主となっている彼にだ。
「あ奴にもな」
「と、いいますと」
「こっちの話じゃ、とにかくな」
「竹千代様にもですな」
「そうじゃ、だからな」
「堺に行かれる時にですな」
「堺で楽しめばよいが」
その前にというだ。
「先にこの安土に寄る様に言っておこう」
「さすれば」
「うむ、竹千代にはその様に伝えよ」
是非にというのだ。
「ここはな」
「さすれば」
「そういえば徳川家もな」
信長は続いて家康のその家のことにも言及した。
「二郎三郎の件は妙じゃった」
「はい、上手く収まりましたが」
「あれを少し間違えるとな」
その時はというと。
「二郎三郎と奥方殿にじゃ」
「腹を切ってもらわねばなりませんでしたな」
「そうなっておった、そうなれば竹千代ともこれまで通り付き合えぬ」
互いに肝胆照らし合うまでの間柄ではいかなくなるというのだ。
「竹千代はずっと頼りになる者、当家が揺らいでもな」
「あの方は支えてくれますね」
「あ奴は天下一の律義者じゃ」
信長はわかっていた、家康のその気質もよく。
「あ奴がおるからわしも安心出来た」
「何かと」
「その竹千代を失いかねなかった」
信康の件を間違えると、というのだ。
「まことに危うかった」
「あれで済ませて」
「よかった、しかも竹千代の跡継ぎはな」
この問題もだった、信長は話した。
「一人しかおらぬ」
「二郎三郎様しか」
「他の息子はまだ小さいしな」
それにだった。
「おそらく二郎三郎程の器の者は出まい」
「確かに」
矢部も言って来た、この場には彼もいるのだ。
「そのことは」
「そうじゃな、二郎三郎は竹千代の跡を継げる」
「そこまでの器の方ですな」
「文武共にな」
勿論政もだ。
「しかし後の者はじゃ」
「そこまでは、ですね」
「おそらく偏る」
文か武、それに政にというのだ。
「だからじゃ」
「二郎三郎様しかおられない」
「そうじゃった」
まさにとだ、信長は矢部にも話した。
「だからな」
「二郎三郎様を失わずに済んでよかったのですね」
「あ奴ならばな。さて」
ここまで話してだ、また言った信長だった。
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