巻ノ十八 伊勢その八
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「満足している」
「それは何よりです」
「ところでそなたは巫女だな」
「左様です」
「この社の巫女は相当なものというが」
「はい、何かとです」
巫女もこう幸村に述べる。
「力が必要です」
「神に通じるものがか」
「そうなのです、それもかなり強く」
「そうなのじゃな、やはり」
「皇室の方も来られますし」
「内親王様もな」
「その方のお世話もしております」
巫女は幸村に伊勢の巫女のことを話していった。
「私はしておりませんが」
「やはりそうか」
「そうです」
「わかった、大事な仕事じゃな」
「それだけにやりがいがありまして」
巫女は微笑み幸村に話した。
「日々充実しております」
「そうか、ではこれからもな」
「励むつもりです」
「わかった、それでは拙者達は旅を続ける」
「伊勢から何処に行かれますか」
「尾張に行くつもりじゃ」
幸村はここまでは巫女に正直に話した、三河に行くことは無意識のうちに警戒して話に出さなかったのである。
「熱田にもな」
「あちらにですか」
「そのつもりじゃ」
「わかりました、では」
「うむ、縁があればまたな」
「お会いしましょう」
こう話してだ、そしてだった。
一行は巫女と別れ尾張に向かった、伊勢から瞬く間に離れて。
その幸村達を見送ってだ、巫女は暫く立っていたが。
その巫女の周りにだ、同じ姿の巫女達が来て囁いて来た。
「蓮華様、あの御仁達がですね」
「真田家のご次男ですね」
「幸村殿」
「そして家臣の方々ですね」
「十人おられますが」
「どの方も」
「ええ、かなりね」
幸村に対するのとは違い砕けた感じでだ、巫女は周りの者達に応えた。
「お強いわ」
「剣術も忍術も」
「相当な方ばかりですね」
「私でも」
巫女は微笑みに真剣なものを宿らせてこうも言った。
「刃を交えれば本気でやらないと」
「まさか。蓮華様でもですか」
「伊賀十二神将筆頭の貴女様でも」
「かつてこの伊勢で最高の巫女と言われ神通力もお持ちの」
「貴女様でもですか」
「ええ、他の十二神将の人達も言っていたらしいけれど」
巫女は幸村達が行った方を見つつ述べた。
「あの人達はどの人達も相当よ」
「蓮華様でも本気でならないとですか」
「勝てないと」
「そう思うわ、どうやら尾張から」
巫女はここでまた言った。
「三河に入るわね」
「徳川様のご領地に入られると」
「では戦に備えてですか」
「これからの戦の為に」
「敵の国を見ますか」
「まだ敵ではないわ」
巫女にはこの理屈がわかっていた、家康は敵の者は領地には入れないがその時点で敵でない者は領地に入れる。
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