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真田十勇士
巻ノ十八 伊勢その七

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「実際にな」
「その餅をか」
「食えばか」
「それでわかるか」
「そうじゃ、では食いに行こう」
「その餅は実に美味い」
 筧も言う。
「だから皆で食おう」
「わしもどんな餅かわからぬが」
 猿飛も首を傾げさせている、そのうえでの言葉だ。
「餅なのじゃな」
「そうじゃ」
「ふむ、餅は好きじゃ」
 筧にだ、猿飛は答えた。
「では食おう」
「もう満腹じゃが」
 幸村も家臣達の話を聞いて言った。
「そこまで美味いのならな」
「食されますな」
「そうしようぞ」
 清海に穏やかな笑みで応えた。
「是非な」
「満腹でもですな」
「そこは気合を入れてじゃ」
 そうしてというのだ。
「食する」
「ですか、では食いましょうぞ」
 清海も主の言葉に息込んで応えた、そのうえで。
 全員でその餅が食える店に向かった、茶も出る店だった。そこに入って餅を頼むとこした餡子に包まれた餅だった。細長く白い部分がやや出ている。
 その皿の上の餅を見てだ、幸村は言った。
「ふむ、菓子か」
「左様です」
 根津が笑みで答えた。
「この餅はです」
「菓子の餅か」
「赤福餅といいまして」
「こし餡の餅じゃな」
「そうです」
「成程な、これは美味いな」
「では」
「はい、それでは」
 まさにと話してだ、そしてだ。
 その餅も全員で食べた、幸村は実際にその餅を食べてから笑顔で言った。
「確かにな」
「美味いですな」
「これはよい」
 満足している言葉だった。
「これまでの料理もよかったが」
「この餅もですな」
「よい、ではな」
「この餅も食べて」
「そのうえで尾張に入りじゃ」
「そこから三河ですな」
「あの国に行こうぞ」
 実際にというのだ。
「そうしようぞ」
「それでは」
 こうしてだった、全員でだ。
 その赤福餅を食べてだ、そのうえで。
 伊勢を後にしようとした、しかしここで。
 一行の前に巫女の服を着た黒い髪を膝のところまで伸ばした楚々とした顔立ちの少女が来た、歳は十七程か。
 その巫女がだ、一行に問うてきた。
「若し」
「どうしたのじゃ?」
「旅の方々とお見受けしますが」
「その通りじゃが」
 幸村は巫女に答えた。
「それが何か」
「やはりそうですか」
「わかるか、身なり等で」
「はい、それでなのですが」
 巫女は幸村にあらためて問うた。
「もう社には」
「行った、そしてな」
「参拝もですか」
「してきた」
 幸村は微笑み巫女に答えた。
「そしてうどんも食ってきた」
「伊勢うどんも」
「そうしてきた、ただ」
「ただ?」
「他にも色々と食ってな」
 そしてとだ、幸村は巫女に笑みを向けてこうも行った。
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