べぜどらくん・しょっく!
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板が吊られまくってる。
「まだ名乗ってなかったよね? 私はマリオン。お兄さんは?」
「ベゼドラ」
「ベゼドラさんね。よろしく! ベゼドラさんって、同業者には見えないんだけど。もしかして無類のパン好き?」
「そうでもない」
そう。
俺が求めているのは、ただのパンじゃない。
サンドイッチに相応しいパンだ。
クロスツェルの国の聖地で出会った至高の一品が懐かしい。
しかし、あれで満足して終わりではいけない。
もっと上が……更に旨い究極のサンドイッチが、世界のどこかにある。
きっとある。
必ずある。
探求の旅は永遠に終着しないのだ!
「そっかー。そのわりには並々ならぬ拘りを持ってそうだけど。なんなら、うちの店の厨房を見てみる?」
「見る」
「あはは、即断即決ね。良いわ、歓迎する。でも、それなりの身支度はしてもらうわよ?」
その格好じゃ、衛生的に問題がありそうだからね。
と、空いた左手で俺のコートの背面を摘まみ、苦笑う。
「当然だ」
パン作りは至極繊細なんだぞ!?
厨房に入るなら、清潔な装いは基本中の基本!
せっかく、本業の職場を見せてくれるって言うんだ。
隅から隅までじっくり観察してやろうじゃないか。
マリオンが職人兼経営者として勤めている『ベーカリー・マリオン』は、こじんまりとした小さな店。
なんて言うんだったか……『テナント』?
縦に細長い建物の一階部分を借りて、細々と商売してるらしい。
大通りが近いっつっても、所詮は端のほう。
知る人ぞ知るってヤツか。
マリオンに小麦粉の袋を渡し。
店員の控え室に入って予備の作業着に着替えた後、入念に手を洗う。
頭部から口元から全身を真っ白い布で包まれると、クロスツェルの教会でパンやら何やら、早朝からいろいろ作ってた数ヶ月間を思い出す。
あの頃はクロスツェルの体を使ってたし。
俺自身の体で厨房に入るのは、これが初めてだ。
「うん! これなら大丈夫ね。入って良いわよ」
同じ作業着に着替えたマリオンが、厨房への扉を開いて俺を手招く。
道具類と作業台、取り置き場と焼き窯で詰まった狭い室内は。
それでもきっちり整えられてて、思ったよりずっと動きやすい。
最低限揃ってれば良いって感じだった教会とはまるで違うな。
創意工夫の為の道具選びにも、マリオンの感性が見え隠れしてる。
「これから明日と明後日分の仕込みをするの。と言っても大体の作業はもう終わってるんだけどね。こっちが熟成を待つ段階で、こっちが二次発酵中。それで、今からはベゼドラさんが運んできてくれた小麦粉を
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