べぜどらくん・しょっく!
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いわ。いつか、その場のノリだろうと気の迷いだろうと一見さんだろうと、私が作った物を選んで買ってくれた総ての人に「美味しい」と笑ってもらいたいの……っとと。危ない危ない」
屈んだ所為で落としそうになった子供程度の大きい袋を慌てて抱え直し、良かったぁなどと一息吐いた。
袋の真ん中に描かれた小麦の絵……製粉したばかりの小麦粉か?
……チッ。
「貸せ」
「え? あ」
二つ目を胃袋に収めて立ち上がり、小娘から袋を奪って、代わりに残ったサンドイッチ入りの紙袋を押し付ける。
確か店は大通りの端を曲がって直ぐだったな。
「あの?」
「小麦粉は貴重な原材料だ。小指の爪先ほども無駄にはできんだろうが。落とされでもしたら我慢ならん!」
見た限りじゃ、この付近に水車小屋はそう多くない。小麦を挽くには一定の制限がある筈だ。
こんな大事な物を俺の目の前で落とすとか、万死に値する!
「……ありがとう、お兄さん。同業者には見えないけど、もしかして無類のパン好き?」
広場を出て大通りを東方面に歩く。
日中でも人の往来が途切れないのは、街が商業中心で成り立ってる所為か? 所狭しと並ぶ石造りの建物に、様々な業種を示す鉄看板が吊られまくってる。
「そうでもない」
そう。俺が求めてるのはただのパンじゃない。サンドイッチに相応しいパンだ。クロスツェルの国の聖地で出逢った至高の一品が懐かしい。しかし、其処で満足して終わりではいけない。
もっと上が……更に旨い究極のサンドイッチが、世界の何処かに在る。
きっと在る。
必ず在る。
探求の旅は永遠に終着しないのだ!
「その割りには並々ならぬ拘りを持ってそうだけど……なんなら厨房を見てみる?」
「見る。」
「あはは、即断即決ね! 良いわ、歓迎する。でも、それなりの身支度はしてもらうわよ?」
その格好じゃ衛生的に問題がありそうだからね。と、空いた左手でコートの背面を摘まんで苦笑う。
「当然だ」
パン作りは至極繊細なんだぞ。厨房に入るなら清潔な装いは基本中の基本!
折角本業の職場を見せてくれるって言うんだ。隅から隅までじっくり観察してやろうじゃないか。
小娘マリオンが職人兼経営者として勤める『ベーカリー・マリオン』は、こじんまりとした小さな店。
なんて言うんだったか……テナント?縦に細長い建物の一階部分を借りて細々と商売してるらしい。
大通りが近いっつっても、所詮端のほう。知る人ぞ知るってヤツか。
マリオンに小麦粉を渡し、店員の控え室に入って予備の作業着に着替えた後、入念に手を洗う。
頭部から口元から全身真っ白い布で包まれると、教会でパンを作ってた時を思い出す。
あの時はクロスツェルの器を使ってたし、俺自身で厨房に入るのは初めて
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