べぜどらくん・しょっく!
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いう細かいところにも気を配って食べてくれるのね」
紙袋の中で二つ目のサンドイッチを掴んだ瞬間。
俺の背後に立った女が、物珍しそうに横から顔を覗き込んできた。
猫を思わせる青い目が、俺の顔と紙袋を交互に見て上向きの曲線を描く。
「サンドイッチって、どうしても手軽にササッとって感じになるでしょ? そんな風に味わってくれる人、なかなかいないのよねえー。そういう物だと解ってはいるけど、やっぱり無造作に消化されちゃうと、あああ〜……ってなるの。解る? もっとこう……、うああああ〜〜……って感じ」
このサンドイッチの作り手か。
ふーん……?
もっと場数を踏んだ年寄りの男かと思った。
見た目は二十代前半の、悪くない容姿。
声と仕草は妙に幼い印象だが。
肉体労働に慣れてるのか、全身適度な肉付きで健康的。
蜜色の短髪に被せた白い三角巾と、丁寧に整えられた指先。
化粧っ気が無い顔は、食品を取り扱う者としての自覚と自負を窺わせる。
真っ赤なワンピースに白いエプロンと、見た目の清潔感も申し分なし。
纏った小麦粉特有の甘い香りは、厨房に居る時間が少なくない表れ。
ふん……やるな、この小娘。
「旨い物には、それに相応しい食べ方ってもんがあるだろ。雑な食い方しかしない阿呆には食わせるな。食材と技術が勿体ない」
「あはは! そこまで気に入ってくれたんだ。ありがとう! すごく嬉しいけど、私も作って売るのが仕事だから。お客様を選ぶなんて、できないわ。いつかね、その場のノリだろうと、気の迷いだろうと、一見さんだろうと、私が作った物を選んで買ってくれたすべての人に、美味しい! って笑ってもらいたいの……っとと。危ない危ない」
屈んだせいで落としそうになった子供程度の大きい袋を慌てて抱え直し、小娘は、良かったあ〜などと一息吐いた。
袋の真ん中に描かれた小麦の絵……製粉したばかりの小麦粉か?
チッ。
「貸せ」
「え? あ」
二つ目をよく噛んで胃袋に収めてから立ち上がり、小娘から袋を奪って。
代わりに、俺が持っていた紙袋を小娘に押し付ける。
こいつの店は確か、大通りの端を曲がってすぐ、だったな。
「あの?」
「小麦粉は貴重な原材料だ。小指の爪先ほども無駄にはできんだろうが! 落とされでもしたら我慢ならん!」
見た限りじゃ、この付近に水車小屋はそう多くない。
小麦を挽くには一定の制限がある筈だ。
こんな大事な物を俺の目の前で落とすとか、万死に値する!
「……ありがとう」
二人並んで広場を出て、大通りを東方面へと歩く。
人の往来が途切れないのは、街が商業中心で成り立ってるせいか?
所狭しと並ぶ石造りの建物に、様々な業種の鉄看
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