暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
べぜどらくん・しょっく!
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けた物のありがたみにも気付けぬ愚か者共め……っ
 「っっ殺おぉす!!」
 食い物を粗末にする奴は例外無く等しく死ね!
 サンドイッチを蔑ろにする阿呆は、クロスツェルが赦しても俺がぜってー赦さん!!
 「待てやゴラぁあああ!!」


 ま、実際に殺しゃしねぇけどな。土下座二百回と割り増し弁償で勘弁してやる俺、超寛大。
 ……断じて、クロスツェルの説教がウザイからじゃねぇぞ。
 噴水が でん と構える広場に置かれた適当な長椅子に座り、踏まれたサンドイッチを野良犬にくれてやりつつ、新しいサンドイッチを白い紙袋から取り出して……おお、めちゃくちゃ旨い!
 てか、なんだ? 一口目のサクッて食感。ふわ、じゃなくて、サク?
 よく見るとパンの両面がきつね色……そうか。トーストしてるのか!
 なるほど、巧い事考えたな。
 表面を軽く焼く事でサクッとした歯応えの後にふんわり感が加味され、口内にほんのり広がる芳ばしさが食欲を増進させる。実に見事な逸品じゃないか。
 あの愚か者共がこんな上物を製造する店を知ってるとは……勿体無ぇな。サンドイッチの素晴らしさが理解できてない奴らには分不相応だ。今度どっかで会ったら丸一日使ってサンドイッチの講義でもしてやろうか。
 「にしても、旨いな。焼くって発想も良いが、その為にパンそのものを改良してんのか」
 加熱調理しても内の食感が変わらないように調整しつつ、味そのものには雑な影響が出てない。材料頼みの誤魔化しも多い中、材料の良さを引き立てる手腕……繊細かつ熟練した確かな職人技だ。
 「あら、嬉しい。そういう細かい所にも気を配って食べてくれるのね」
 二つ目を掴んだ瞬間、背後に立った女が物珍しそうに横から顔を覗き込んできた。青い目が俺の顔と紙袋を交互に見て、上向きの曲線を描く。
 「サンドイッチって、手軽にササッとって感じじゃない? そんな風に味わってくれる人、なかなかいないのよね。そういう物だと解ってはいるけど、やっぱり無造作に消化されちゃうと「あああ……」ってなるの。解る? もっとこう……あああ……って感じ」
 このサンドイッチの作り手か。
 ふーん……もっと場数を踏んだ年寄りの男かと思った。
 二十代前半の悪くない容姿。声と仕草は妙に幼いが、蜜色の短い髪と丁寧に整えられた指先は、食品取り扱い業に携わる者としての自覚を窺わせる。白いワンピースに真っ赤なエプロンを掛けて……清潔感は申し分無し。纏った甘い香りは、厨房に居る時間が少なくない表れ。
 やるな、この小娘。
 「旨い物には相応の食べ方ってもんがあるだろ。雑な食い方しかしない阿呆には食わせるな。勿体無い」
 「あはは! そこまで気に入ってくれたんだ? ありがとう! すっごく嬉しいけど、私も作って売るのが仕事だから。お客様を選ぶなんて出来な
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