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歌集「春雪花」
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 振り返り

  想いぞ流す

   霜月の

 明けぬ夜眺む

    月はいづこか



 ふと思えば…もう初冬の十一月…。
 彼が此処から立ったのは初春の雪の名残る時…こんなに時間は過ぎてしまっていたのだな…。

 彼への想いに気付き、一体どれだけ溜め息を吐き…嘆き…祈ったことだろう…。
 そんな想いも虚しく、秋は立ち去って冬が来るとは…。

 寒さが増してくる夜を一人でいるのは寂しく…明け方近くの夜空を眺める…。
 夏にはあれだけ明るかった月は、もう…そこにはなかった…。



 夜を越えて

  朝来たりても

   影はなく

 風伝えしは

     冬の足音



 長い夜を越えて明日はやって来るというのに…朝になっても彼の姿はどこにも見つけられない…。

 風に訪ねても、伝えるのは冬の寒さばかり…。

 どれだけ待っていても…来るはずもない彼…。
 私の朝は来ることなく、きっと…夜の闇を光なく歩くのだろう…。

 この先も…。




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