第二十四夜「白昼夢」
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から黒い服…恐らくは喪服であろう服を身につけた女性が姿を現し、彼女…あの無気力に歩く女の側を通り過ぎた。
その喪服の女性が通り過ぎた時、無気力に歩くだけだった彼女が、一瞬顔を上げて喪服の女へと視線を移した。しかし、直ぐに同じ様に歩き出した。何もなかったと言うように…。
それは不思議ではあったのだが、彼は彼女ではなく、喪服の女性の態度がより不思議であった。あんなに不自然にあるく彼女に見向きもしない…どころか、全く気付いていない様子だったからだ。
「何なんだ…?」
彼は何だか気分が悪くなった。
無気力に歩くだけの彼女は、明らかに喪服の女性を知っている風であった。にも関わらず…。
だが、ここでそれをどうこう考えても詮ないこと。彼は思考を一旦停止し、彼女を追うことに専念した。
しかしながら…何故こうも気になるのか?
解らない…。解らないが、彼は彼女の行く先に何らかの答えがある気がし、ただ淡々と追うことにしたのであった。
かなり歩いた。恐らくは二時間近く歩いたであろう。
「此処は…。」
そこは山の中。彼はここに見覚えがあり、このまま進めばダムがあることを知っていた。
ダム…と言っても小さなものだが、ここは彼が気晴らしに散歩するコースなのだ。今日来た道は、彼が散歩する道とは真逆だったために、今の今まで気付かなかったのだ。
しかし、今日は暑い。山の中は特に蒸し暑く感じ、彼は噎せ返る緑に軽く目眩すら覚える程であった。
その中で、彼は彼女を見失った。
「…ッ!」
彼は慌てて辺りを見回しながら早足で進むと、見慣れたダムが現れた。
一瞬、陽射しが視界を眩ませたが、直ぐに木陰へ入ると、彼はその光景に暫し絶句した。
木陰に入ってダムを見ると、そこには彼女がいた。だが次の瞬間に…飛び降りたのだ。
小さいとは言え、やはりそこそこの高さはある。水の深さもかなりあると考えられ、彼では到底助けようもない…。
ただただ、彼はそれを見ているしか出来なかった。
少しして金縛りが解けたかの様に息を吐き、冷や汗を拭いながらふと振り返ると、彼はその異様さに再び驚愕せざるを得なかった。
「そんな…まさか…!?」
彼が見たもの…それは先ほどダムから飛び降りた筈の彼女だった…。
- まさか…さっきダムから飛び降りた筈だ…。 -
彼はそう考えはしたが、その女が彼女と同一であることは、その姿や歩き方をみれば一目瞭然だと分かっていた。
「そんな筈は…有り得ないだろ…!」
フラフラあるく彼女を目で追いながら、彼はそう恐々と呟く。そうしている間にも彼女は再びダムへと向かい、そして…また同じ様にその身を水面へと投げ出した。
そして…また同じ道から同じ様にして再び現れたのだ…。
その光景に、彼の思考は停
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