第二十四夜「白昼夢」
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
- 私は何を…? -
「…暑い…。」
彼は気付くと、そこは外だった。
風の無い初夏の陽射しの中、萌える緑は咽せ返る程に色鮮やかにその身を誇張している。
ふと見れば、そこは何と言うことはない町だった。彼は街路樹の下、木陰にあるベンチへと座っていた。
「寝ちゃったのか…。」
彼は少し恥ずかしそうに呟き、フッと立ち上がって歩き出した。
どうと言う訳ではないが、彼はコンビニにでも入ろうかと考えた。その日がやけに暑かったこともあるだろう。
正直、彼は涼みたかったのだ。
「いらっしゃいませ。」
コンビニに入ると、店員の少しばかり高い声が響いた。暑さのせいか、彼のすぐ前に入った男性は些か苛ついた表情を見せていた。
彼は少し歩きながら商品を見ていたが、最近のコンビニには多種多様な商品が置かれていることに驚いていた。滅多にコンビニなぞ入らないからだ。
だがその反面、そこまで揃える必要性があるかどうかと疑問にも思ったのだった。
暫くすると、彼はある女性に気が付いた。何とも虚ろな目をした女性で、彼は最初、彼女も涼みに入っているのだと思っていた。
だが、どうも様子がおかしいのだ。何を見るでもなく、彼女は店内をただただフラフラと歩き回っている。にも拘わらず、誰も彼女に目を止める者はいない。店員すら見ていないのだ…。
彼が不思議に思っていると、彼女は出ていく客の後ろについて外へと出たため、彼も外へ出ようと出入口へと足を向けた。すると、先ほど一緒に入った男性が彼の前に出て早々に外へと出たのだった。
- 最近の若者は…。 -
もう少しでぶつかりそうだったため、彼は少しばかり気分を害した。
だがそんなことよりも、彼は先ほどの女性が気になって直ぐに周囲を見回した。
すると、彼女はコンビニで見たと同じ様に、ただただフラフラと歩道を歩いているのが見えたため、彼は彼女の後を追い掛けた。
これと言って彼女がどうと言うわけではない。彼女自身よりも寧ろ、彼女のその行動が気掛かりなのだ。
生気の無い虚ろな瞳、力が抜けた様な四肢…足だけを無理矢理動かしているような…まるで映画に出てくるゾンビにも似た、そんな不自然な歩き方…。
「死んでる…なんてことはあるまいが…。」
彼はそう呟き、そして些か身震いしたが、次の瞬間にはフッと自嘲した。
そんなことはない。彼女は多少ふらついているにせよ、自分の足で歩いているのだから。
そもそも、そんな荒唐無稽なことを考えるよりも、何か怪しげな薬でもやっているのではと疑う方が自然ではないか?
彼がそんな馬鹿げたことを考えている間にも、彼女はフラフラと歩き続けている。ただひたすら…何処へ行こうとしているかは分からないが、彼女は淡々と歩いている。
暫くすると、向こう
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ