瑠璃色の死神ー前編
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救済措置は用意しないだろう。
と言ってもスズ自身もこの噂を信じていないと思われる。
この様な店で働いていると噂だとか都市伝説だとかの類いの話が嫌でも耳に入ってくるはずだ。その中から会話のネタとして盛り上がりそうな物を適当に選んで俺達に話を振っているのではないかと思う。現にあまり深い話はせず、すっかり俺たちの意見を聞く体制に入っている。
しかし、俺とは対称的にこの話に随分と食いついている方が一人。
「なにそれ。凄い気になるんだけど。詳しく教えてよ」
ラピスの反応にスズは若干苦笑いを浮かべている。どうやら詳しいことを聞かれると対応に困る様だ。なら何でこの話を振ったんですかね?
ほんの一瞬。けれども確かに認識出来るほどの僅かな沈黙の後、スズは意を決したように息を呑んだ。
「私も良く分からないです」
わずか一瞬でしかない沈黙。その時間が何秒にも感じられた。スズの話を聞いたラピスがゆっくりと口を開いた。
「いやいや、そういう冗談いいから。教えてよ」
スズの決意の一言を聞いたラピスは半笑いで何処かへ放り投げる。
それを見た俺とスズのため息が溢れたのはほぼ同時だった。まぁなんとなくこうなることはわかってたんだけどね。
どうにもラピスは自分勝手、というわけではないが自分が信じたことを疑わない性格な様だ。
今回の事然り、今日俺の家に上がり込んだのだって俺が暇だと信じきっていての事なのだと思う。
これだけ聞くとただのワガママに聞こえるかもしれない。確かにそうだと思う。しかし、彼女にはそのワガママを通させてしまう不思議な魅力だとかカリスマだとかそう言った類いの何かが有るのだ。
最終的に人を納得させてしまうような人徳。俺はそれをワガママとは言わないんじゃないかと思う。
と、言ったところでそれはそれ、これはこれである。今回に関してはスズ自身本当に知らないんだから答えようがない。
執拗に迫るラピスに流石のスズも困惑している様子だ。ならば俺が助け船を出すしか有るまい。
「おい、ラピス。それくらいにしとけ。スズも困ってるぞ」
俺が言うや否やラピスは笑顔で頷いた。やったぜ、分かってくれた様だ。やれば出来るもんだな。
一人ごちていると突如後頭部を鷲掴みにされる。何事かと後ろを見るとそこにはラピスの顔が有った。その事を認識した直後俺の頭は机の上に叩きつけられていた。
「うるさいな。私はスズから聞きたいの。何も知らないファルは黙ってて」
叩き付けられた部分にまとわりつく様な痺れが襲う。
前言撤回。ただのワガママである。
俺が恨めしい視線をラピスに向けると彼女は小さくため息を吐いた。
「仕方ない。情報収集に行くよ!
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