瑠璃色の死神ー前編
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人間誰しも腹は減るものである。それはゲームの世界で有っても例外ではない。
何かを食べたいと思う欲望が有れば美味しい物を食べたいと思う欲望もまた存在する。それはここ、ソードアートオンラインの世界においても変わりはない。
ゲームである以上何も食べなくても健康上に問題はなく、別に体力が自然回復しないとかそんな事も無い。
しかし、娯楽の類いが少ないこの世界では食事一つでも娯楽足りうる。つまりは美味しい物を食べることがこの世界で生きることの楽しみの一つだと言えるのだ。
そんな訳で時は午前10時頃、俺たちは空腹を満たすべく町の中央通りにそびえ立つ店、「スイーツカルデラ」の前まで来ていた。
店の前にいるだけで微かな甘いおかしの臭いが鼻孔をくすぐる。音なんかはほぼ完全にシャットアウト出来るのに臭いだけはそれが出来ないのだから中々に凝ったゲームである。そんな臭いに感化されてかお腹が空腹を訴えるべく自然と低音を鳴らし始めた。
思い返せば朝食を取っていないのだから空腹なのは当たり前である。
しかし、それを当然の事と思われていらっしゃらない方が一人、腹を抱えて笑い出した。
「ファルってばどんだけお腹空いてんの?」
「朝から何も食べないんだよ。誰かさんのおかげでね」
軽い皮肉を交ぜてラピスの言葉を流す。
そんな俺の反応に彼女はいたずらっぽく口許を歪ませた。
「おやおや?そんな態度を取るようなら今回の件は無しにしちゃうけど?」
ラピスの使い古されたような台詞に俺は言葉を詰まらせた。
俺はラピスを助けた事で、ここの店のケーキを一つ奢ってもらう約束をしてある。しかしそんなのはただの口約束。結局の所決定権はラピスが握っていることに変わりはない。俺がどうこう言っても何の影響力も無く、俺を殺すも生かすもこの女次第ということになるのだ。
こいつの言う通りになるのは癪だが、今ここで逆らうと折角の報酬がチャラになる。やはりそれだけは避けたい。
「悪かったよ」
俺はラピスにギリギリ聞こえるような声でぽしょりと呟いた。ここは素直に従うのが正解。仕方がなくだよ?仕方なく謝るんだからな。
「お?意外と素直だねぇ。もしかしてデレ期ってやつですか?」
「あぁ、はいはい」
俺はラピスのボケを適当に流す。
「ついに、突っ込まなくなってしまったか。これは成長と捉えるべきか否か」
ラピスは軽く涙ぐんでいるがそれもスルー。
しかし、無視というのもかわいそうな気がしてきたので、ジト目で睨むという微妙な反応を示しておくことにした。
「それはそれで傷つくなぁ」
ラピスは涙ぐみながらも苦笑いを浮かべている。うん……その……あれだな。どうすればいいか
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