精神の奥底
51 Dark Side Of The City 〜中編〜
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る埋立地で今では中央街同様にビルが立ち並んでいる。
両親の仕事で引っ越してきてから、3年間見続けてきた光景だ。
夜だというのにそれを忘れさせる人工的な明るさと人々の悪意が絡み合うニホン有数の魔都・デンサンシティの特徴を色濃く受け継いだ散歩コースだった。
気づけば、どうしても好きになれない病院が見えてきていた。
人工栽培されたハイビスカスを始め、美しい花々で彩られた庭を横切り、正面からではなく、裏口から泥棒のように院内に忍び込む。
「……」
足音を忍ばせ、階段を登る。
病院とは生者と死者が共存する珍しい場所だ。
少なくとも病院に来るということは、大半が怪我や病気になってしまった場合だ。
妊娠や出産といっためでたい例外もあるが、それすらも100%が嬉しい話題というわけでもない。
3階の病室のドアを開く。
「ミヤ…」
カーテンの閉められた個室でベッドは窓の近くに1つだけ。
ベッドで眠り続ける彼女の身体には何本ものチューブが着けられ、顔色もかなり悪い。
一命は取り留め、集中治療室からは出られたものの、まだ余談は許せない状況にある。
執刀した若い外国人の女性の先生が言うには、ミヤは年齢と平均を超える長身の割に心肺機能がまだ未発達でこのような大怪我による長時間に渡った大手術は無理だったらしい。
そのため病院に運ばれてすぐに行った手術では一命を取り留める程度に抑え、数日間の休養を挟み、今日の夕方から夜に掛けてもう一度手術を行うという2回に分ける手法を取らざるを得なかった。
「……」
ミヤは勉強ができるだけでなく、運動も得意だったはずだが、今思い返すと長距離やバスケットボールといった持久力を必要とするものは時々休んで見学していた。
病院側で所持していた健康保険証から過去の病歴を調べたところ、以前にも暴行を受けて運び込まれた事があり、その際も手術が難航したらしい。
暴行の相手は当時のクラスメイトたちで、彼女は自分と出会う直前までの1年間、車いすで過ごしていたらしい。
手術というのはドラマや漫画のように怪我をする度に何度も何度もできるというわけではない。
身体に相当な負担が掛かり、場合によっては手術をすることによって障害を背負って生きていくことになるリスクと隣り合わせな行為だ。
13歳という年齢にしてこれまで2度も生死に関わる大怪我をして手術をしてきたミヤの身体は普段の振る舞いからは想像もできない程に弱りきっていた。
もちろん若く回復も高いが、これだけの怪我の大きさや手術の規模だけに日常生活が送れるようになってからも完全な回復には長い時間が掛かる。
「……ッ」
眠っている様子を見るだけで、生きているのが奇跡に思えた。
もしこのコンセントを抜いてしまえば、今のミヤの命は僅か数分で燃え尽きる。
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