第3章 黄昏のノクターン 2022/12
23話 真昼の情景
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らはこんクソゲームからプレイヤー全員を解放するために前線におるんやぞ。履き違えんなや」
ドスの利いた低音が金切り声を黙らせ、今度は俺の方に向き直る。コイツの目は嫌いだ。あまり見たくないもので視線を逸らすと、思わぬセリフが耳朶に響いた。
「うちのモンが迷惑掛けてもうたな。ホンマ済まんことした」
「………は?」
「な、なんや!? その腑抜けた声は!」
今現在、俺の目の前にいる毬栗頭が本当にキバオウなのか、俺には信じ難かった。あれだけベータテスターに憎悪を燃やしていたはずの男が、どうしたらこれほどの心境の変化に至れるのだろうか。どのように思い起こしても答えに至れない。
「いや、特に意味はないけど………」
「まあ、ええわ。今はジブンと角突き合わしても埒明かんからな」
「………やっぱりアンタおかしいぞ?」
「べ、別にどうもしとらんわ! ………それにな、ジブンには攻略本の隠しクエのページで世話んなっとる。せやのにうちのが恩知らずな言い草しよったのが気に食わんかっただけや」
「隠しクエストのページ、攻略本にだと?」
ぶっきらぼうに話すキバオウの言葉には驚愕を禁じ得ない。確かにアルゴには、日頃の情報提供への謝礼として幾つかの隠しクエストを無償で提供しているのは事実だ。しかも、提供しているのは攻略の難易度の割に報酬の貰いが良いものに厳選しているからこそ、アルゴからすれば稼ぎのタネに出来ると思っていたが、まさか無料配布の攻略本に記載していたとは驚かされる。ただ、こういったエピソードがあるものだから、あの鼠は守銭奴にはなりきれないのだろう。惜しむらくは、俺達が貰っている攻略本には当該のページが省略されているというくらいか。
同時に、驚かされるのはキバオウの言だ。どこか感謝しているような物言いはやはり信じることが難しい。ボス戦から遠ざかっていた期間に何かがあったのだろう。機会があれば、アルゴにでも聞いてみるとしよう。
「とにかく、これで失礼するで!!」
勢いよく踵を返すキバオウと、後を付いて行くALSの一団を成り行きに任せて見送り、クーネ一行と共に取り残される。嵐が去ったような静けさの中でゴンドラの船頭が欠伸を漏らす。どうやら引き下がってくれたらしい。クーネ達の様子を窺うと、やはりというか何というかニオがレイに隠れるように立っていた。やはりあの金切り声で捲くし立てられれば、気弱な彼女には堪えるものがあるのだろう。対して、レイの方は何故かまんざらでもない様子でニオの頭を撫でている。正直、彼女達には度し難いものがあるように思える。
「リン君、ありがとう。多分リゼルがあのままだったら、間違いなく喧嘩になってたと思うから」
「ア、アタイはそんなに沸点低くねェ!!」
「そうだよ? ウチ
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