第3章 黄昏のノクターン 2022/12
23話 真昼の情景
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ようとした矢先、言い争うような声が耳に入る。音を追って視線を向けると、緑のカラーリングで胴衣を統一した集団と四人組の少女が睨み合う構図があった。更に補足すれば、緑の陣営では痩せぎすのフルフェイスマスク姿の男が陣頭で喚き、対する四人組は黒髪の少女が最前線に立って相手を射竦めている。
「………燐ちゃん、あれってクーちゃんたちだよね?」
「だろうな。というか、なんで《解放軍》なんかと喧嘩してるんだ?」
解放軍。正式名称を《アインクラッド解放軍》とするギルドは、第一層ボス攻略において苦い思いをさせられた毬栗頭ことキバオウとその取り巻きが中核となって結成した攻略ギルドだ。同時期に、第一層ボス攻略の司令官を務めた騎士ディアベルのPTメンバーであったシミター使いを旗印に結成された攻略ギルド《ドラゴンナイツ・ブリゲード》とは攻略最前線を二分する勢力になっているとはアルゴから聞いてはいるが、そんな英雄様がなぜクーネ達と言い争いなどしているのか。状況が理解できない。ただ、諍いは拗れているようにも見える。
「………分かった。話だけ聞きに行こう」
「うん!」
あまり気は進まないものの、知り合いである以上は放置するにも寝醒めが悪い。個人的にはかのキバオウがリーダーであるギルドのメンバー相手に悪目立ちこそしたくはないのだが、そんな理由ではヒヨリが聞き入れてはくれないだろう。この際、腹を括るとしよう。ティルネルがケープのフードを被ったのを見届けてから、重い足を動かす。
「オ、オレらは攻略で忙しいんだ! お前らみてーな、ザコのい、い、いぃ一般プレイヤーこそ順番を譲るのが礼儀だろーが!!」
「あ゛ぁ?………今なんつった?」
「お前らみてーな観光気取りの一般プレイヤーどもの為に最前線で命張ってんだよ! このくらい優先されて当り前じゃねーか!!」
「それが順番抜かす理由になるか!!」
ALS所属の男が自棄になりながら金切り声を振り絞り、黒髪の少女――――リゼルが怒鳴る。事の仔細は把握できた。同時に事態の危うさも理解する傍らで、思わず溜息が零れてしまう。この間まで新規プレイヤーとベータテスター間での確執があったかと思えば、今度は前線プレイヤーと攻略に参加しない一般プレイヤーとの間で軋轢が生じようとは。
SAOをクリアするべく前線プレイヤーが尽力しているのは理解できる。この層まで進出出来たのだって、紛うことなくかけがえのない彼等の功績だ。しかし、前線プレイヤーが特権を振りかざすようなことがあってはならない。前線プレイヤーが権力で虐げる彼等の中からも、やがては前線に進出するプレイヤーが現れるかも知れない。そうなった時、虐げられた者は決して手放しでは古参の前線プレイヤーを信
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