暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
23話 真昼の情景
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
さに似た感情を抱かされる。


「あの店主は全てを秘密になんかしてない。むしろ相当に面白い事を教えてくれたんだ。分かるか?」
「だって、始めは嘘を吐いてて、最後は教えてくれなくて………うぅ、わかんないよ………」
「解ってるじゃないか。あの店主はヒヨリの言う通り嘘を吐いて、最後まで口を割らなかった。でも、《嘘がバレてから一度も船の存在を否定しなかった》だろう?」
「そうかもしれないけど、でもそれって大事なの?」
「かなり重要だ。状況証拠、言動から判断して防具屋は間違いなく《船を所有していた》事になる。つまり、船は水運ギルドを頼らずとも確保可能であると推測できる」
「むぅー、すごい回りくどいような気がするけど………」
「いいえ、ヒヨリさん。情報収集は結局のところ地道な積み重ねです。どうしても回りくどくなってしまうものなんですよ」
「通常ならば、な」
「………はい?」


 前置きを残し、首を傾げるティルネルもそのままに街のマップデータを展開し、その中の一地点を指し示して見せる。そこは街の北西の端に当たる場所、未だ踏み込んだ場所ではないために空白となっている。それ故にマップに顔を寄せる両名は怪訝そうな表情を見せるが、根拠はある。


「街の構造物の配置はゴンドラに乗っている時に確認した限りだと、ベータテストの頃と変化はない。恐らくは住人も、同じ住居を利用していることだろう」
「ベータテスト………確か、リンさんやごく一部のプレイヤーが持つ記憶でしたか。今回の情報収集が通常と異なる理由なのですか?」
「そうだ。街の建造物の配置と住人の行動エリアがベータテストと一致しているならば、かつて砂礫だけの涸れ谷だったこの層において異質な人物がいた。彼の住処には何かの素材みたいなガラクタで散らかっていたが、何を造るわけでもなく、それでいて意味ありげな事ばかり話すNPCだ。俺も色々と考えさせられたが、真相は分からず仕舞いだった。しかし、現状の情報収集の方向性から鑑みて、恐らくはそこに答えがあるだろう。………手っ取り早い話をすれば、そいつは船大工か船乗りという可能性が強い」


 涸れ谷というマップである以上、船大工であったあの老爺にはクエストNPCという役割は与えられなかった。商業区画から遠く外れた立地に加えて、ゲームを進行する上で何のメリットもない彼の許を訪れたプレイヤーこそ数少ないことだろう。


「水辺ではなかったところに、そのような方がいるというのも不可解ですけれど、とにかく現地へ向かってみましょう!」
「そうだな。今はそれに限る。………そうなればゴンドラか」
「乗るんだね!?」
「はいはい、乗りますよ。さっきこの近くに船着き場があったよな………あ?」


 目的地も再び定まり、はしゃぐヒヨリも鎮めて行動を開始し
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ