第1部 異世界へ
2.夢の少女
鶴の舞う空へ
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扉を開け、跪いた。海斗は不思議そうな顔をし立ち上がった。
「威勢がいいな。」
少女はにわかに笑みを浮かべた。その時海斗ははっと気づいた。
「その声は....。」
「む?別の世から来たと騒ぎ立てるそなたが、なぜ私のことを知っておるのだ。」
「...俺は夢であなたに会いました。」
「夢で...?そなたは.....。そうか、なるほどな。」
「...?」
少女は中に納得したようににこりと笑った。海斗は何に納得したのかさっぱり分からなかった。
「私は豊洲国の姫、井上鶴千風紫だ。鶴姫と呼ぶがよい。で、そなたはの名は?」
「梶原海斗です..けど...。」
「海斗か。そなたは剣をもったことはあるか?」
「はい、一応。」
「では海斗、私の、豊洲国の軍に参加しないか?」
「えっ...?!」
鶴姫はまっすぐな瞳で海斗を見つめた。海斗は驚きのあまり声がでなかった。
「鶴姫様なにを!」
「黙れ、風早。私は今この海斗と話をしておるのだ。」
鶴姫のまっすぐな視線をうけ、海斗はなにか懐かしいような、不思議な感覚を覚えた。また、今、現実とも思えないほどの信じられないことが起こっているというのに、海斗は少しずつ冷静になってゆく自分を感じた。そして、鶴姫との出会いが“決まっていたこと”、すなわち運命の導きで、自分がここにいるように思えてきたのだった。
「今は戦の最中だからな。どのみちそなたが自分の生まれた世に帰るためにも、国内をうろつきにくかったり、国外へ出られないのは困るであろう?これは私にとってもそなたにとっても悪い話ではなかろう?」
「.......分かりました。やります。」
「よし。」
そこへ一人の兵が入ってきた。
「鶴姫様、影光様が探しておられます。次の戦の件でご相談したいとのことです。」
「あい分かった。今戻る。風早海斗はそなたの隊へ入れてやれ。では後は頼んだぞ。」
「御意。」
そう告げると、鶴姫は兵とともに去っていった。牢にいた兵は海斗の手を縛っていた縄をほどいてくれた。風早と呼ばれる青年は優しく笑って言った。
「私は、五人将の長で中府風早太介と申します。風早と呼んでください。...海斗でしたっけ。おもしろい格好ですね。君の世界では皆そのような格好をしているのですか?」
「えっと、若い男子はこのような格好をしています、けど....俺の話を信じてくれるんですか?」
「そのような格好は見たことはありませんし、言葉も少々なまっているようですから。それに私の主君があなたを信じるというなら、私も信じますよ。」
海斗はその言葉を聞いて、鶴姫と呼ばれるあの少女のことがますます気になったのであった。
続く
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