第1部 異世界へ
1.夢
鶴の舞う空へ
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暗闇の中、少年の前に長い黒髪の少女が静かにたたずんでいる。
『私は...あなたの運命の上を歩むもの...。』
『君は...』
『私は....鶴...』
少女が何か言いかけると、強い風が吹き荒れ、そのまま少女を連れ去っていった。
1.夢
少年が目を覚ますと、そこは暗闇の中ではなく、少し散らかったいつもの少年の部屋だった。少年の名は梶原海斗。17歳高2。幼い頃両親を亡くし、中学に入ってからは遠くに住む叔父の援助を受けながら、中高一貫の学校に通っている。部屋にはカーテンの隙間から朝日がこぼれている。海斗は重い体を起こし、ゆっくりと着替え始めた。そして、朝食を作り、食べ、片付け、軽く掃除を済ませ家を出た。住宅街を眠い表情を残したまま、歩き出した。海斗は今朝の夢のことを考えていた。実は、初めてあの夢を見たわけで訳ではなかった。ここ最近、何度も、あの何かを告げようとする少女の夢を見る。しかし、その少女の顔は夢以外では一度も見たことがない上に、名前も知らない。そして何より、何を告げようとしているかすらわからない。海斗は、この夢についてなにか考えてもしかないとわかっていながら、ついつい考え込んでしまった。そんなことを考えているうちに、駅前を通り過ぎ商店街を歩いていた。商店街には同じ制服の少年少女がちらほら歩いていた。海斗が下を向いて考え込みながら歩いていると、後ろからその背中を追いかけて、一人の少年が走ってきた。
「おはよー海斗!あれ...お前朝練は?」
「今日は火曜だから休み−。」
彼の名は島崎大雅。海斗と同じクラスの男子で、中学の時からの親友だ。島崎と海斗は並んで歩き始めた。
「朝からなに難しい顔してんだ?」
「いや...ちょっとな...。」
「まーた例の変な夢のことか?気にしすぎだってー。それより今日数学の小テストあるじゃん?勉強した?」
「まあな。」
「いいよなーお前頭いいからー。」
海斗は島崎とたわいもない話をしているうちに、あの夢のことは不思議と忘れていった。歩く二人の少年を少し後ろで見ていた、制服の少女が静かにつぶやいた。
「時が...来た。」、と。
学校を着いた。すると、廊下を歩いている男子生徒が、海斗に気がついて挨拶した。
「梶原先輩、おはようございます。」
「おう、おはよ。」
男子生徒は制服から見て中学生だった。男子生徒を見た島崎が不思議そうに聞いた。
「あれ?あんな後輩いたっけ?」
「ああ、あれはフェンシング部の時の後輩だよ。」
海斗は、今こそ剣道部に所属しているが、それは高校に進級した時の話であり、中学時代は同じ学校だったが、フェンシング部に所属していた。海斗は関東大会まで出場するほどの腕前だったが、高校に上がると同時になぜか辞めてしまったのだった。ちなみに海斗
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