第6章 流されて異界
第128話 勝利。そして――
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を引き千切って、新しい自由に動く手や足を生やそうとしても、ヤツが失った四肢を再生する前に、その再生用の気を使って蔦を伸ばし、新しい部分も封じて仕舞える、と言う事。
ただ、何処からそれだけの気を得ているのか、それが分からないのが不安なのですが。
何にしても――
「?」
事ここに至って、ようやくハルヒを解放。久しぶりに自らの両足で大地に立つ彼女。……なのですが、彼女はそもそも旅館の部屋から拉致された人間。流石に純日本風の旅館の部屋で靴を履いている訳はなく、現在は素足の状態。舗装された道路だと言っても、そんなに長い時間立たせて置く訳にも行かない。
懐に手を入れ、封印用の宝石を右手に握る俺。
青年は動かない首を、腕を、そして身体を無理矢理に動かそうともがきながら、ウー、ウーと意味不明な声を上げ続ける。まぁ、正直に言うと無様としか言いようがない状態。
これでは邪気を完全に祓い切るには時間が掛かると思うけど、それでも俺と戦って、ここまで一方的に叩きのめされる程度のヤツが、水晶宮の獄から逃げ出す事は不可能だと思うので……。
結局、最後は時間が解決してくれるでしょう。
取り出した宝石。少し大きめの紫水晶を左手に。右手で印を結び……。
その瞬間、周囲すべてに敵意が満ちた。
マズイ!
何が起きたのか分からない。もしかすると、ハルケギニアの時と同じように目の前で拘束され、封印される寸前だった青年に加護を与えている邪神が顕現しようとしているのかも知れない。
確かにあの時の例が有るので、目の前のヤツを封じている術式はかなり強化している。しかし、それでも当然、限度はある。
未だ自らの身に強化が施されたままの状態でハルヒを抱え、右に思いっきり跳ぶ。
その刹那の後、俺たちが居た場所に上がる火柱。
「ちょ、ちょっと、何が――」
一拍遅れてハルヒが何か言い掛けるが、そんな物は無視。これ以上、この場に留まるのは危険と判断。
その声に重なる更なる爆音。精霊の守りだけで殺し切れなかった衝撃が身体を打ち、熱波がハルヒの長い髪の毛を乱す。
周囲は一瞬の内に灼熱の地獄と化す。何もない空間に次々と立ち上がる炎の竜が周囲から酸素を奪い、更なる熱を発生させた。
青年を封じていた結界も、この炎が相手では分が悪い。そもそも、外からの攻撃に対しての耐性はあまり強く作っていない。
舞うように、跳ねるように回避を続けながら、シルフを起動。酸欠で死亡する事を防ぐと同時に、耐熱の防御を上げる。
そう、このままでは俺は未だしも、普通の人間に過ぎないハルヒが危険。
一瞬の内に完全に炎に包まれて仕舞う結界。今から耐火の術式を組むにしても、その間、この攻撃を加えて来ている相手が待って居てくれるとは限らな
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