第6章 流されて異界
第128話 勝利。そして――
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時間を掛ける訳がない。五つから六つの妨害用の術式がこの術式には組み込まれている。
それに、そもそも俺は木行。土に属する術で木行の俺の術を破るのはかなり難しい。
特に、この大きな木々に囲まれた場所では――
「ずっと、今、オマエさんが寝転がって居る位置を中心に動いて居た……術式を組んで居た事に気付いたのなら、もっと何とかする事が出来たかも知れないけど」
それも今となっては後の祭りか。
歩道の真ん中……。最後に呪を打ち込んだ地点を踏む前に足を止め、道路の真ん中で大地から僅かに浮いた位置に封じられた青年を見つめる俺。
今回、この犬神使いの青年を拘束した術式の基本は、ハルケギニアでアルマン・ドートヴィエイユを拘束した術式の更に上位版に当たる術式。故に、口も完全に封じられているので、これでは話す事も無理。
本来ならこの形から聖槍で呪力を完全に封じた後、呪符……はおそらく強度的に問題があるので、手持ちの宝石に封じた後に悪意が消えるまで水晶宮に処理を任せるのが正しい判断でしょう。
俺の見鬼でも、この目の前の青年の正体は見抜けず。但し、この犬神使い自身の特殊な能力により自らの正体が見抜かれる事を阻止して居ると言うよりは、コイツのバックに、俺の能力を妨げる何モノかが存在していて、その所為で正体が判明しない、……と言うように感じている相手。
少なくとも真面な生命体……と言うか、魂魄と肉体を持った生命体の様には感じられない。おそらく、非常に高度に物質化した、しかし、元を正せば霊的物質で構成された存在なのでしょう。
ただ……。視線は油断なく青年を見つめながら、意識は腕の中に居る少女へ。
そう。矢張り問題がある。いくら相手が人間ではない、……と言っても、ハルヒの見ている目の前で日本語を用いて会話の出来る、ある程度の意志の疎通が出来る相手を屠るのは流石に抵抗が……。
いや、現実にこれだけの回復力を示す相手を屠る事が出来るかどうかは微妙。ただ、聖槍で完全に胸を刺し貫き、両手、両足を封じた状態で呪具の中に吸い込む、と言う行為は何処から見ても葬り去ったようにしか見えない、と言う事。
まして、この絶対的に有利な状態では……。
これでは、まるで弱い者イジメをしているようで寝覚めが悪い。
この状態から縛めを無効化して、更にその後に俺から逃げ切る事はかなり難しい。完璧を期するには少し足りないけど、それでもこれでも十分。同じ結果を得る事が出来る。
心の中でそう結論付け、表面上は未だ余裕を持った様子で説明を続けた。
「その蔦はお前から気を奪う事によって常に成長し続ける」
気=生命力と言い換えても良い。コイツの様に無限に回復し続けるようなヤツが相手では、こう言う術式を組むのが有効ですから。これで、無理矢理に腕や脚
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