第6章 流されて異界
第128話 勝利。そして――
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野太刀は既になく、大量に召喚可能な犬神は、俺に対しては時間稼ぎ程度の役にしか立たない事が分かっているはず。
……なのに、何故か最初から続く余裕を保ったままで立ち上がって来る犬神使いの青年。
もっとも、今更、そんな事はどうでも良い事なのですが。
「あんたじゃあたし達に勝てない事は理解出来たんじゃないの?」
いい加減に降参したらどうなのよ。
無理な体勢から立ち上がる途中の俺の代わりにそう話し掛けるハルヒ。ただ、戦って居るのは俺一人であって、彼女は基本的に俺に抱き着いている役割だけ、のような気もするのですが。
ただ、手放せば間違いなくコイツが俺のアキレス健となるので、先ほどの戦いの間中、ずっと俺から離れなかった事だけでもふたりで戦ったと表現するべきですか。
それに、少なくとも――
「あ、いや、ハルヒ。もう大丈夫。勝負は着いた」
離して居た右手をもう一度ハルヒの背中に回し、これで少し安定の悪かった形が改善。
そして、一歩、二歩と前。人工の光が照らす場所へと歩を進める。
「そんな強がりを言っても無駄だよ」
本当に勝負が着いたと思ったのなら――
何か言い掛けて、しかし、直ぐに「フガ?」……と言うマヌケな言葉を最後に、言葉を止めて仕舞う青年。その青年の身体をどんどんと覆って行く蔦。先ず、印を結ぶ両腕の自由と、そして口訣を唱える口が封じられる。
「あんた、あれって……」
青年が大地に縫い付けられて行く様を見つめながら驚きの声を上げるハルヒ。
そんな彼女の見ている前で、一瞬の内に腰から下が完全に封じられ、
「あのなぁ、ハルヒ。俺が意味もなく逃げ回っているだけ、やと思って居たのか?」
大地に引き倒される青年。但し、大地と青年の間には僅かな空間が。
ヤツの属性については、今のトコロ詳しい事は分かって居ない。しかし、空を飛べず、地下を走りぬける事が出来る能力から推測すると、土に属すると考えた方が良い。こう言う輩が直接大地と接して居る状況はあまり良いとは言えないので、出来るだけ離して置くのが鉄則。
刹那、青年の身体が一瞬ぶれた。何と言うか、電波障害を受けたテレビの映像が二重に成ったかのように一瞬見えたのだが……。しかし、その一瞬後には元通り大地に両手、両足を広げた形で存在していた。
尚、この形は車裂きの刑と言われる刑罰の形。まして、その刑罰に等しい形……つまり、青年の身体はその縫い止められた両手、両足の方向に向かって常時引っ張られ続けているはずですから。
「あぁ、土遁か、地行術かわからへんけど、今、オマエさんを拘束している術式の最中に脱出用の術を行使すると余計に絞まる事になるで」
そもそも、ただ単に四肢を拘束する程度の術式を練るのに、あれだけの長
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