第6章 流されて異界
第128話 勝利。そして――
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を躱し、其処から手首を返しただけで切り上げて来た一撃を躱した俺に、三度白刃が閃く!
完全に振り抜かれた、と思われた一撃を驚異的な腕力で押し留め、其処から返す刀で更なる一撃!
対して、俺の背後には最早逃げるスペースはない!
ハルヒが声にならない声を上げた。コイツ、この最後の場面でも――
僅かに身体を沈める俺。同時に術式起動!
次の瞬間!
何故か吹き飛ばされる青年。彼が振るった野太刀は半ばまでブナの木を切り裂きながらもそこで止められ――
そう。俺とハルヒが両断され、すべてが終わったかに思えた瞬間。
僅かに身体を沈める俺。しかし、その程度では斜めに切り下げて来る太刀は躱し様がない。
その事を悟った青年の瞳に勝利を確信した色が浮かび、その勝利を確実にする為にすり足で彼我の距離を詰めようとした、正にその瞬間。
ヤツの足の動きを阻害する何か。何時の間にか大地より発生した蔦がヤツの足を。
そして、ブナの枝から垂れ下がって来た蔦がヤツの腕を拘束。
それは僅かな抵抗。コイツは全力で振るった一メートル以上の日本刀を無理矢理、途中で留めて逆方向へと振り抜く事が可能な馬鹿力を発揮している。更に言うと、俺のように重力を操れる訳でもないのに一般的女子高生のハルヒを軽々と振り回し、自らの盾として使用出来るほどの膂力も見せている。
対して、仙術で操られて居るとは言え、所詮は自然に存在している蔦。ヤツが全力で動けばあっさりと引き千切られて仕舞う。
しかし、その一瞬の隙は俺に取って非常に重要な時間。
身体を大地に平行にするような形で、紙一重に太刀をブナの大木に食い込ませるのに成功。
大地に着けた右手と右足。それに首と肩を付けたブナの大木で、自身とハルヒの全体重を支え――
ブナの大木に阻まれ、完全に野太刀を振り切る事の出来なかった青年の、無防備に晒された腹部へ左脚による蹴りが炸裂!
完全に全体重の乗った蹴りではなく、ほぼ牽制に近いような蹴りでは有ったが、それでもこの場の精霊を完全に従えた龍種の蹴り。
完全に虚を衝かれた青年が、身体をくの字に折り曲げたまま真後ろへと跳ね飛ばされ――
二度バウンド、その後に転がるようにして、最初に俺の立って居た辺りで止まった。
しかし――
「いや〜、びっくりしたよ」
しかし、何事もなかったかのように立ち上がる青年。確かに、目深に被ったフードは外れ、その男性としては線の細い白面と言っても良い顔は晒され、大して手を加えていないと思われる髪の毛は乱れている。
外見的に言うのなら、服は破れ、大きな外傷こそ見えない物の、どう贔屓目に見ても余裕がある戦いを演じて居る、と言う風には見えない状態。
更に言うと、その手にしていた
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