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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第128話 勝利。そして――
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る笑みだったのだが。

「今の交錯の間だけで最低三度、俺はオマエを倒す事が出来た。その程度の事が理解出来ない訳はないな?」

 出来る事ならば俺と敵対する愚を理解して、この地で封印される事を承諾して欲しいのだが。
 このまま正面から戦って消耗した挙句に封じられるか、眠るように封じられるか。

 結果は同じ封印だが、この犬神使いの青年の心が得る物は違い過ぎる選択を突き付ける。まして、この提案は自分自身に掛かる精神的な負担や、体力的な負担が違い過ぎる。
 かなり余裕を持った雰囲気を維持しながら最初に交錯した辺りで立ち止まり、其処から青年を見据える俺。これが多分、最終通告。これを受け入れて貰えなければ、後は戦うしか方法がなくなる。

 しかし――

「他の地で出会ったのならそれも良かったのかも知れないな」

 青年がその見た目に相応しい声音で上空を見上げながら答えた。今の彼が発して居る雰囲気は非常に穏やかな気配。とてもではないが、命のやり取りをしている雰囲気ではない。
 他の地。確かに今のこの地……高坂と言う街が妙な気に覆われているのは最初から感じている。但し、それは目の前のこの青年が行って居る術の影響が現れている、と考える方が妥当なのだが。
 それとも何か特殊な事情が、この街にはあると言うのか?

 少しの疑問。眉を寄せ、ヒップホップ系の衣装に身を包んだ犬神使いの青年を改めて見つめ直す俺。何か見落とした点がないのか。コイツ自身がより強い何モノかに操られ、本心では解放されたがっているのに、自由にはならない状態なのではないかと……。
 その僅かに気が逸れた瞬間!

「行け、犬神たち! 俺の敵を食い殺せ!」

 そう叫ぶ青年。その瞬間、俺の周囲に存在した冬の大気を押し退ける獣の臭い。そしてアスファルトの下より現われる無数の獣の首。
 しかし――

 僅かに遅い! 
 俺を完全にその包囲の内へと納めたかに思えた犬神の狂暴な瞳が、次の瞬間、目的の獲物を失い、視線を宙へと彷徨わせた。
 確かに感度の低い……魔力や呪力の流れを知覚出来ない一般人が相手ならば、地の底からの襲撃は有効であったでしょう。しかし、俺は見鬼の才に恵まれた東洋系の術者。地の底からだろうと、背後や死角からの一撃だろうと、むき出しの悪意に気付くな、と言う方が難しい。

「ハルヒ、ちゃんと掴まって居ろよ!」

 強く左に向かって跳びながら、俺たちを包囲しようとした狂暴な光の数を大雑把に把握。その数はおそらく十。
 空中で体勢を立て直し、正面に敵を置く形……つまり、後ろ向きに逃げる形を取った瞬間、ハルヒを支えていた両腕の内、右腕を一閃。

「信じて居るわよ!」

 それまでも強く回されていたハルヒの両腕がより強く俺の首に回され、そしてふたり
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