第6章 流されて異界
第128話 勝利。そして――
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刀を左半身のまま一閃。地摺りか下段の構えから俺の左脚の太ももを目指しての攻撃。
しかし、今度はふわりと言う形容詞が相応しい軽い身のこなしで宙に浮く俺。その俺に対して返す刀で今度は右胴を薙ぎ払おうとして来る青年。
その切っ先の速度は先の太ももを払おうとしたソレの倍する勢い。刀を返すそのタイミングと言い、間違いなく本命はコチラの方。
正に古の剣豪、佐々木小次郎が使用したと言うツバメ返しと言う技はこう言う技であったのであろう、と言う技。おそらく常人ならば、返す刀を空中で躱す術などなく、胴を両断されていたかも知れない。
但し、それは飽くまでも表の人間の達人レベルなら、と言う話。俺は残念ながらその表の世界の人間には出来ない事が出来る人間……見た目人間。中身、能力は人外の存在でもある。
生来の能力。重力を自在に操る能力を発動!
その瞬間、完全に宙に浮いた状態だったはずの俺の右脚が一歩前に。其処には返す刀を振り抜こうとする為に手首を返した状態の青年の右腕が。
その右腕を踏み台にして更に一歩。そこにはフードを目深に被ったヤツの頭が完全に無防備な形で――
しかし、その場はただ踏みつけるだけで終え、ヤツの後方へ。そのまま――ハルヒを胸に抱いたままで今度は伸身の宙返り。
最後に半分捻りを入れる事によって、背中を見せる青年の後方約五メートルの位置に一度着地。しかし、身長一七〇程度の人間の頭を踏み台にした挙句、空中で伸身の宙返りを入れる、などと言う体操選手も斯くや、と言う動きを行った事により……。
完全に勢いを殺し切る事が出来ずに、そこから更にもう一度、伸身の後方への宙返りを行って、ようやく止まる事が出来た。
これは、流石のハルヒも目を回したかも知れないな。
普段の俺の動きからするとスピードは明らかに劣る動き。ただ、これはアガレスによる強化が出来ない事と、流石にハルヒが耐えられるスピードで動かなければならないので、仕方がない状態。その分、少し余裕を持った動きを心掛けて居た心算なのですが……。
ただ、先ほどの動き……伸身の宙返りふたつと言うのは流石に無茶だったかも知れないな。
少し身体の力を抜くかのように息をゆっくりと吐き出した後、そう考える俺。
しかし――
「あたしに気遣いは必要ないわ」
オリンピックの体操選手以上の動きに対して、流石に首に回した腕に力を籠めながらも、それでもかなり落ち着いた声音で話し掛けて来るハルヒ。視線の方は、たたらを踏むように二、三歩進み行く青年の背を見つめ続けて。
こいつ、いくら俺の精霊の守りの中に居るとは言え、あの動きでも正気を保って居られるのか。
涼宮ハルヒと言う人間のスペックの高さに、内心で舌を巻く俺。但し、それは飽くまでも内心での話。流石に今は
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