第3章 リーザス陥落
第70話 ジオ戦前の休息
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ジオの町の攻略に暗雲が立ち込めているのは もう言うまでもないだろう。
その町にいる男の存在。たった1人でも その男が ジオに いるのといないのでは、全く印象が違うとさえ言えるのだ。
男の名は、《トーマ・リプトン》
現行人類最強の男と 自国のみならず、他国でも評される程の豪傑。その男の騎士道精神は、敵であったとしても、その強さは。……精神は 敬意を表する程のものだ。
歴代の勇将は 敵であったとしても 豪傑と語り伝えられるのは そう言う敬意があったからこそだ。
故に、トーマも未来ででも、伝えられる事になるだろう。真の戦士、武士だと言える男だから。
……だからこそ 違和感が拭えない者が此処にはいた。
「………」
この司令本部で ある程度の軍議も終わり、腕を組み壁にもたれかかる体勢で目を瞑るのはユーリだ。
人類最強と称される そのトーマの名は、勿論ユーリも知っている。
ハンティから訊く前から 自分の耳にも届いていた名前だ。
様々な世界を、国を見て回った彼だからこそ。……それ程の剛の者の事を、耳にしていてもおかしくはない。そして、何よりもトーマの性質についても勿論知っている。
確かに敵側、相対する側から考えれば まさに鬼神、戦神と形容されるだろう。そして、その圧倒的な力を目の当たりにしたら、心の弱いものであれば、あっという間に 戦意を喪失しかねない。だが、自軍を守る為に、味方の最後の1人まで逃がす為に 敵に背を向けずに最後まで戦い抜き、決して背中に傷をつけない。
そして、生還するのだ。
100もの軍勢を、最後まで劣勢だった戦の際に、最後まで戦い抜き、味方を救ったその姿は 勇姿そのものだ。味方のトーマに対する信頼は絶大。トーマは望まないが、トーマの為に 命を散らす事も辞さないのだ。 敵側でさえ、敬意を表する程だから。それは 総大将としてリーザス軍を率い続けてきたバレスも同様だろう。……同世代だからこそ。
そして、だからこそ、解せないのが 今回のヘルマン側の、……トーマの動きだった。
「ユーリ殿」
「………」
バレスが声を掛けるが ユーリは集中をしている様で 反応しなかった。バレスは 聞こえていなかったのだろう、と思い再び声を掛ける。
「ユーリ殿?」
「……ああ。悪い。少し考え事をしていた。どうしたんだ?」
「いえ。ジオの町にも可能な限り、密偵を差し向けてはいます。流石に 軍の動きの詳細を把握するのは 難しいですが、 まだ 動きは無い。と言う報告は上がっておる。……故に、こちら側にも猶予はあるという事じゃ」
「……ああ。その間に 有力な情報があれば、だな。オレとしても 色々と探りは入れておくつもりだ。……
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