第二百二十九話 隠されていたものその六
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「だからじゃ」
「具足は持たずに」
「行くぞ」
「畏まりました」
「その様にな、ではな」
「はい、それでは」
「都に入る」
そこが虎穴だった。
「もう少し話が来てからな」
「それからですか」
「都に入る、相手がどう仕掛けるかわからぬが」
「それでも動けば」
「わしに軍勢が来れば」
このこともだ、信長は念頭に置いていた。
「幸村達がおる、奇妙にもな」
「飛騨者や慶次殿をつけたので」
「大丈夫じゃ、死なぬ」
それはないというのだ。
「そういうことじゃ、ではよいな」
「都にですね」
「入ろうぞ」
「それでは」
「さて、都のことはよく知っておる」
はじめての上洛の時よりだ、幾度も入っているからだ。屏風図まで描かせてそれを謙信に送ったこともある程だ。
「あそこは実は守りにくい」
「いざ軍勢が来れば」
「軍勢を寄せ付けにくい地形の中にあるが」
「軍勢が来れば」
「その時はな」
「守りにくい場所ですね」
「都は低い壁に囲まれておる」
それだけだというのだ。
「あれはただの飾りじゃ」
「そうですね、ですから」
「わしが都に入ればじゃ」
「まさにその時こそ」
「攻める機会じゃ」
信長、彼をというのだ。
「絶好のな」
「しかも奇妙殿もおられて」
「余計にじゃ」
それこそというのだ。
「相手も仕掛けてくる」
「では上様も奇妙殿も私も」
「餌じゃ」
笑っての言葉だった。
「はっきり言えばな」
「左様ですね」
「そうじゃ、その餌にな」
「相手が飛びついてくるぞ」
「そしてその餌に飛びついた相手をですね」
「我等は引きずり出してじゃ」
そしてというのだ。
「その餌である我等は逃れてな」
「そうしてですね」
「返し刃を放つのじゃ」
これが信長の考えだった。
「だからここまで用意周到にしておいたのじゃ」
「相手に気付かれぬ様に」
「そして確実に我等が生き延びな」
例えだ、餌になろうともというのだ。
「その後でじゃ」
「返り討ちにするまで、ですね」
「整えた、ではな」
「はい、私も」
帰蝶も申し出てだった、二人は共に都に入ることにしたのだった。その信長にまた一報来た。今度の報の主はというと。
「ふむ、竹千代からか」
「はい」
万見が信長に答えた。
「左様です」
「そうか、それでか」
「堺に行かれ」
「見物を楽しみたいか」
「二郎三郎様の件が落ち着きまして」
信康のことがというのだ。
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