第二百二十九話 隠されていたものその三
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「皇室の方でも代々の中でも滅多にお読みになっていなかったそうじゃが」
「そこまでの書ですか」
「それを読ませて頂いたとは」
「うむ、わしも果報じゃった」
こうも言った林だった。
「その様な尊い書をな。とにかくじゃ」
「そこにですな」
「そのまつろわぬ者達のことが書かれていたのですな」
「その様に」
「うむ、その者達は闇とあった」
まさにというのだ。
「闇じゃ」
「では高田殿も崇伝、天海も」
「まつろわぬ者」
「そうなのですな」
「おそらく高田家は草じゃ」
朝廷に入ったそれだというのだ。
「古い家ながらそのはじまりは確かではないな」
「謎の多い家ですな」
「確かに」
「では、ですな」
「あの家は」
「うむ、闇のまつろわぬ家じゃ」
林は周りの者に鋭い声で言った。
「このことをすぐにじゃ」
「はい、上様にですな」
「お伝えされるのですな」
「これより」
「そうする」
こう言うのだった、その者達に。
「文を書く、安土に届けてくれ」
「さすれば」
「その様にです」
「送らせて頂きます」
「そのことはご安心を」
「これからも調べる」
その者達のことをというのだ。
「また文を書くことになるやも知れぬ」
「ではその時はまた」
「送らせて頂きます」
「その様にさせて頂きます」
周りの者達も林に約束した、こうして彼から安土に文が届けられた。それは高野山や伊勢に奈良、比叡山等からもだった。
報が来てだ、そしてだった。
信長はその報を全て読みだ、平手に言った。
「わしの思った通りじゃ」
「あの者達は、ですか」
「まつろわぬ者達じゃった」
「あの、ですか」
「爺も知っておるな」
「はい、かつて大和朝廷に滅ぼされて」
そしてというのだ。
「封じられた」
「その筈じゃったがな」
「実は、ですか」
「滅ぼされても封じられてもおらず」
「生き残っていた」
「そうだったのじゃ、しかもじゃ」
信長は平手にさらに話した。
「あの者達と戦っていたのは大和朝廷だけではない」
「神武帝だけではないのですか」
「古事記や日本書紀に出て来る者達じゃが」
「記紀に出ている頃に終わったのではないのですな」
「あの者達との戦はな」
「そうでしたか」
「そしてじゃ」
さらに話す信長だった。
「聖徳太子、天智天武両帝、行基菩薩、弓削道鏡にな」
「錚々たる顔触れでありますな」
「そうじゃな、他にも桓武帝、坂上田村麻呂、役行者、安倍晴明に八幡太郎義家もあの者達と戦っておったという」
「では源頼光と四天王、一人侍」
「酒呑童子もじゃった」
「まつろわぬ者達だったのですか」
「うむ、そうじゃった」
あの都を脅かした鬼もというのだ。
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