第十九話 それぞれの戦後(その1)
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は容赦せん男だ。その内フェザーンは思い知るだろう、馬鹿な事をしたとな」
そう言うとリヒテンラーデ侯は大きな笑い声を上げた……。気楽なものだ。
宇宙暦796年 1月27日 同盟軍宇宙艦隊総旗艦ラクシュミ ヤン・ウェンリー
「如何ですか、司令長官は」
「うむ、大分良いようだ。ただ……」
グリーンヒル参謀長が困惑した様な声を出した。三角巾で左手を吊っている姿が痛々しい。もっとも私も頭部に包帯を巻いている。痛々しさは似た様なものか……。
「ただ?」
「……いくらか記憶の混乱が有るようだな。何が有ったか良く分かっていないようだ」
「説明されたのですか?」
参謀長が力なく首を横に振る。
「それは後で良いだろう。今は治療に専念してもらった方が良い。それに説明しても理解できるかどうか……」
「そうですね」
お互い語尾が重い。溜息を吐きながらの会話だ。
「今更言っても詮無い事だが貴官の言うとおり、アスターテ星域で帝国軍が撤退するのを待つべきだった」
「それは……」
確かに今更言ってもだ。溜息しか出ない。
同盟軍は敗れた。損失は全体の三割に近い。艦艇数一万五千隻、将兵百五十万人近くになるだろう。大敗と言って良い状況だ。後方から帝国軍が現れた時、司令長官の直率部隊は懸命に陣形を変更し新たな帝国軍に対応しようとした。前方で戦う艦隊は撤退しようとしていた。しかし、遅かった……。
我々の部隊は急進してきた帝国軍に粉砕された。戦力差が三倍あり不十分な態勢なまま先制されたのだ。持ち堪えることなど出来るわけがない。帝国軍はあっという間に我々を粉砕し前方に展開する三個艦隊に襲い掛かった。
右へ右へと移動しながら背後を攻撃する。後退しようとしていた第二、第七、第九の三個艦隊はあっという間に崩れた。潰走する同盟軍を帝国軍は後方、そして斜め後ろから追撃した。損害の多くはこの時に発生した。
帝国軍が追撃を早い段階で打ち切らなければ損害はもっと大きいものになっただろう。彼らが追撃を打ち切ったのはイゼルローン要塞駐留艦隊を追撃に使う事を躊躇ったからだろう。一時的にしろイゼルローン要塞を丸裸にする事の危険性を考慮したからに違いない。
ドーソン司令長官は戦闘の最初の段階で負傷により人事不省になった。総旗艦ラクシュミは帝国軍の攻撃を受け左舷に被弾、ラクシュミは烈しく振動した。その衝撃でドーソン司令長官は指揮官席から放り出された。
ドーソン司令長官だけではない、グリーンヒル参謀長も私も、いや艦橋に居たすべての人間が衝撃によって席から放り出されただろう。だが司令長官は運が悪かった。放り出された時、頭部を強くテーブルに打ちつけたらしい。そして床に倒れたドーソン司令長官の上に同じように椅子から放り出された士官が倒れ込
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