月下に咲く薔薇 18.
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はっきりした事がある。昨夜クロウがコミュニケーションを取った相手は、取り込んだ神話的能力の利用方法を思考によって生み出している知性体、という事だ。コミュニケーションの容易さから、かなり近しい環境で育った者。人間である可能性はかなり高いと思われる」
ジェフリーは自ら声に出し、他の指揮官達はそれを聞く。儀式のようであり、実際儀式として機能しているのだろう。
次元獣を操るアイムのように怪植物の上位者がいるとすれば、ZEXISは必ずやその人間と戦わねばならなくなる。百戦錬磨のZEXISとて、人間を攻撃する為に愛機に乗るとなれば相応の覚悟を必要とする。今の言葉は、指揮官達の心を固めるものだったのだ。
月の話題になった為か、我慢しきれずにレントンが切り出す。
「あの。関係がないんですけど、ここで陰月の事を訊いてもいいですか?」
大塚とスメラギが、同時に顔を見合わせた。
「いいわよ」
「最近、陰月の光が弱くなっていませんか?」
「よく知っているわね」ジェフリーとも目配せしたスメラギが、机上の映像を切り替えた。映っているのは、画面の左側に寄って輝いている月一つきりだ。「ドラゴンズハイヴの説明によると、変化が始まったのは2日前。光量が急激に減少して監視が更に難しくなっているそうなの。元々朧気なものだったから、可視画像ではほとんど形を捉える事ができなくなったわ」
「2日前…って言うと」
クロウが思わず膝を打つ。
「そう、シンフォニーを名乗る相手からドラゴンズハイヴにメールが届いた日なんだよ」と、大杉がここで初めて会話に加わった。「メール到着時刻の10時間以上前には陰月の変化が始まっていた、とF.S.の資料にはある」
クロウにロックオン、レントンの3人が同時に唸る。
「だからと言って、あの怪植物と陰月を直接結びつける方法はまだ無い。実に残念な事ではあるが」息をつく大塚に、無念の表情が滲んだ。「昨夜の戦闘で、敵の怪植物に桁外れな吸収力が備わっている事が判明した。ソーラーアクエリオンの壱発逆転拳は敵の養分として全て吸収にされ、Dフォルトは更に強化されてしまった。元々ZEXISの力に引きつけられ我々に接近している敵だ。残してゆく痕跡には危険な罠が仕掛けられているものの方が多いと見て間違いないのだろう。たとえ、敵が一枚岩でないとしても、だ」
一瞬、大塚と目が合った。レントンも、それに気づく。
「クロウ、そしてレントン。それでも君達は、ブラスタやニルヴァーシュに乗って昨夜の敵と再び戦いたいと思えるかね?」
「無論だ」
クロウは即答した。
「俺もです」、「私も」と、レントンだけでなくエウレカも首肯する。
気遣いのつもりかもしれないが、異物があるという理由で今後出撃を制限されるのは面白くない。ここでクロウは、自分の考えを吐き出す事にした。
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