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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 18.
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存在を感知していないようです」
「良かったな。芽は出なさそうじゃないか」
「そ、その話は勘弁してくれ」
 昨夜仲間達に聞かれた話を蒸し返され、クロウは赤面してつい大声を出す。
 きょとんとするレントンとエウレカが、同時に「芽…?」とクロウを覗き込んだ。
 当然、速攻でスメラギに「クロウ、会議中よ」と窘められてしまう。子供達に笑いかけた後、羞恥心から垂れた黒い前髪をまとめて払いのけた。
「しかし、何らかの異物は存在している。問題なのはそこだ」
「ええ」と、スメラギも重く返す。
「では、クロウ。先程君が感じたという会話できる喜びを、いよいよここで実感してもらうとしよう。思考を共有する中で何を聞いたのか、詳しく話してくれたまえ」
 促すジェフリーに応え、クロウは、まず女性の声が聞こえたところから始め、やりとりの全てを順に話した。最後に、当事者として受けた印象を付け加える。
「少しばかり言いにくいんだが、おそらくあれは人間だ」
 それを明かせば何が起きるのか。想定はしていたが、実際の反応は空気の中へ如実に現れた。
 直後に指揮官全員の表情が凍りつき、空気が重量を増したのだ。
 当然、ミシェルにも動揺は浮かび上がる。
 ロックオンとレントン達は昨夜朧気に状況を理解している為、今更驚いたりはしていない。アムロもまた、クロウの報告を変化無く聞いている。
「困っていたり、追い詰められて頼む事ばかりを優先したり。ちょっとしたギャグで笑うところなんてのも、普通の人間の反応そのものだ。話していた内容も、おそらく全部本当なんだろう。会話と違って思考の共有だからな。嘘をつきたいって衝動があれば、相手にだだ漏れになる。…つまり、敵の中には2派あるって事だ。で、力の足らない方が俺達ZEXISに助けを求めていた」
 2呼吸程の間の後、ロジャーが「その印とやらの使い方は、伝わって来なかったのか?」とクロウに尋ねた。
 衣擦れの音をさせ、カナリアがクロウの検査結果と差し替えで小さな光の円盤を表示する。
 映像が空中に現れた途端、ロックオンとレントン、エウレカの3人がそれぞれに身じろぎした。「あの事か」と思うより先に、一連の光景とやりとりが脳内で再生される。
 さもありなん。光の円盤は、敵の1人がダイグレンに残したと思われるあの月似の光だからだ。
「いや」思い出しつつ、確信と共にクロウはまず短く返答した。「まだ早い、って感じはしたな。俺も力を貸すと約束しちゃいないんで、向こうが渋ったって事は有り得る」
「そうか」納得したらしく、ジェフリーが口調を変え詳細の説明に入る。「驚くべき事にこの形と陰影は、バトルキャンプから観測可能な現在の月と一致した。月齢13。月特有の陰影を確認する事もできる。それが後々何の印として機能するかは未だ不明のままだが、今この場で1つ
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