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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 18.
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寝なければと思った。
 尋常ならざる活動時間と内容の濃密さが、戦士の心身に本格的な睡眠と休養を強要する。ものの1分と経たないうち、クロウは仰向けに姿勢を変えロックオンと共に寝息を立てていた。
 無夢の時間を過ごしている間は、幸福でも不幸でもない。しかし朝を迎えれば、回復した体力が戦う為の気力を育んでくれる。
 携帯端末のアラームで、いつもと同じ時刻に目を覚ました。なかなかに良質な睡眠がとれたらしく、すっきりと目覚め体も軽い。
 ブリタニア・ユニオン軍にいた頃クロウが身につけた疲労回復術は、ZEXISに加わってから活用頻度が激増した。後ろ暗い過去で得たものの1つだが、それが今の自分を支えているのだから皮肉なものだと思いたくなる。
「目が覚めたか? ま、顔色はいいようだな」
 既にベッドで上体を起こしているロックオンが、こちらの様子を伺い仕種で朝の挨拶をした。
「駆けずり回ったといっても、昨日1日の話だろ。その程度で翌日に疲れを残すようなら、ZEXISのパイロットは務まらないさ」
「そりゃそうだ」
 笑みを交わし、ランニングをしようと2人揃って部屋の外に出る。
 今朝も、真冬の寒気が猛威を振るい身を凍えさせる。が、幸い風は弱く、筋状の雲が海上に浮かんでいる程度の美しい好天だった。船体に人型の下半身を通したダイグレンが斜度の低い陽光をほぼ真横から受け、基地の端にそれは大きなV字型の影を落とす。
 光学迷彩を施しているトレミーと、戦艦形態のマクロス・クォーター。そしてダイグレン。今のZEXISには3隻の母艦が存在しているが、今日はランニング中の誰もがちらちらと濃赤色の陸上戦艦に目をやっていた。
 ゆうべ格納庫で起きた騒動は、既に仲間達の多くに浸透しているようだ。
「おっはよう! ロックオン! クロウ!」
 背後からルナマリアが追い抜きざま、右手の拳を鼻に当て、さっと5本の指を開く。
 彼女がその仕種で何を表現しているのか、クロウはすぐに察しがついた。
「おいっ!! そいつは、どういう広まり方をしてるんだ!?」
「私は心配してるのよ。お大事に。じゃあね!」
 ろくな回答をせず、ルナマリアはシンと共に建物の角を曲がって消えた。隣のシンが心なしか肩を震わせているように見えたのは、錯覚なのだと思いたい。
「おいおい…」
 閉口するクロウの横で、「ネタとして広まってるな」とロックオンがゆうべの顔ぶれを脳内で一斉表示しつつ1人の顔を点滅させる。
「…ガロードか」
 主犯の名はすぐに出て来た。
「他に誰がいる?」
 昨夜の失笑ぶりを思い出しながらも、昨夜のクロウの体験が悲壮感を伴わず広まった事に少し安堵する。
 クランと中原が連れ去られ、ニルヴァーシュに異変が起きた事に加え、クロウの体とダイグレンの格納庫には敵が何かを仕込んでいっ
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