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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 18.
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 かげづき。漢字では、陰月と書く。
 それは、クロウ達が生きているこの多元世界に存在するもう一つの月を指す。
 尤も、月の他に新たな衛星が加わった、という意味ではない。20年前に起こった大時空震動の後、日本と同様に複数の次元にある月が一つに重なり損ね、多少ずれた位置で2つが2つのまま安定してしまった結果だ。
 その性質は、互いに行き来が可能な2つの日本より、むしろ暗黒大陸に近い。次元境界線が陰月への接近と着陸を拒み、かつての暗黒大陸と同様未だに切り離された存在として不可侵の状態にあるからだ。
 弱い光を反射し視認と外観の観測を可能にする為、正式に月と確認はされた。だが、地球とその月を結ぶ直線上に元々の月が浮かぶ関係で、決して地上から仰ぐ事はできない。「陰月」は、その名が示す通り2つの意味で人類を拒む薄闇のような存在だった。
 誰も占有しに行かず、何者をも飛び立たせない壁の向こう側。ZEXISは以前より、陰月と地球からは不可視な月の裏半面に注目し、独自の監視を行っている。
 スメラギの話によると、ドラゴンズハイヴのリーダーF.S.が「月の事ならば我々の管轄だ」とリアルタイムでのデータ提供を申し出たのだそうで、その監視映像はメンバーならば好きな時に誰でも見る事ができる。
 バトルキャンプの中でも、アフリカの砂漠地帯にいようとも。
 今まで口に出さなかったが、クロウ達パイロットは全員確信していた。ZEXISと陰月の関わりはいずれ必ず生まれる、と。
 かつて暗黒大陸では、次元境界線の消失を機に甲児や赤木達が上陸を試み、そこでシモン達と出会っている。壁の向こうとして往来不可能だった世界にも人は生きており、彼等はZEXISの助力を必要とした。
 ましてや、F.S.は先読みに長けた男でもある。ZEXISの前身にダンクーガノヴァがかなり早い段階で吸収されたのは、KMFやMSを軽く凌駕するその火力が対次元獣やテロリスト戦に相応しいものと映ったからだ。エルガン代表でなくとも、ドラゴンズハイヴの備えはインペリウム帝国誕生を予見していたかのような行動と捉えたくなる。
 そのF.S.の指示で獣戦機隊もZEXISに合流し、隊の底力は更に上がった。何らかの方法による先読みの結果として2つの月の監視を始めた、と推測する方が自然ではないか。
 突然陰月の名を持ち出したレントンを、ティファとガロードがじっと見つめている。
 2人が搭乗するガンダムダブルエックスは、サテライト・リンクの都合上、月との関わりを持っていた。月の異変、という言葉には人一倍敏感なのかもしれない。
 最近、陰月がどのように見えているかなど、クロウは全く気に留めていなかった。少年の指摘に、「そうなのか?」と、ついとぼけた答えを返す。
「ああ」
「レントン。お前、陰月の事わざわざ毎日観察してるん
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