騎士の章
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「愚か者どもっ!」
その一言で天より雷が落ち、城の庭に古くからある大樹を真っ二つにして燃え上がらせた。
人々は皆、目の前に立つ女神を恐れ跪いた。
「己が権力に溺れ甘んずるとは、汝等は民を何と思うておるのだ!」
次には季節外れの雹が、城の屋根や壁を激しく叩いたのであった。風は荒れ狂い雷鳴は未だ続いていた。
玉座の王も恐れおののき、その座より降りて女神にひれ伏した。
その場に立っていられたのは、マルスただ一人であった。
「さぁ、その剣を王や貴族共に見せてやるのだ。」
目を閉じて覚悟を決め、マルスは目を開くや女神の言葉に従った。
エルンストやクレン等は、その布の下に何があるのかと目を見張っていたが、それを見るや驚愕したのである。王もまた然り、声にならぬ声で言った。
「その紋章は…!」
その柄に刻まれた紋章は、麦・葡萄・剣を模したもので、その周囲には名が彫り込まれていた。
―“マルシウス・ステラ・フォン・プロティーラ”―
その紋章と名を知り、王はもはや言葉すら出せなかった。
この地に現在の王家の基礎が築かれたのは、今より千年程前のことで、ラッカという小国に来た若き一人の旅人によるものである。その名はシリウス=フォン・プロティーラと言う。
当時のラッカは暗黒時代とも言われ、時の皇帝が勝手気儘に政権を振るっていた。それを見兼ねたシリウスは、単身で城へ踏み込み込んだのである。
民はそれを知るや一斉に蜂起し、雪崩の如く城に攻め入ったのだという。
その後、それを聞いた貴族達も立ち上がり、皇帝を討つことが出来たのであった。
何故シリウスがここまで信頼されていたのかは定かではないが、民に多くのことを伝え、生活を豊かにしたのだとも言われている。
後にシリウスは皇帝に推挙され、その位に着くことになった。その直後より国の拡大を始め、現在あるプレトリウスを作り上げたのである。
自らの名も改め、皇帝という呼称も廃し、国を王国と定めたのもこの時である。
それと同時に、民を圧政で苦しめることの無いよう王典を作成し、従わぬ貴族には厳しい処罰を与えたのであった。
後世に伝えられている“ラッカの国変”である。
暫らく驚きのあまり口を鉗んでいた王が、やっと言葉を口にした。
「その紋章は…我が王家の祖、プロティーラ王家のもの。何故このようなところに…」
王はマルスを見上げた。その問いの答えを待っている様子である。
マルスは再び瞳を閉じ、その問いに静かに答えた。
「我が王家は十二年前に滅亡した。我一人残し、国は滅んだのだ。友好関係であった隣国の裏切りによってな。その後、我は諸国を旅し、この大陸までやってきたのだ。」
偶然なのか、それとも必然なのか…。マルスがこの大陸に辿り着いた直後、賊
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