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SNOW ROSE
騎士の章
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た。
「汝はよくやった。後は彼の者が役目。」
 そう言うや、近くに控えていたマルスを呼び寄せたのである。
「そろそろ良いのではないか?その剣を以て真実を明かしても。」
 エフィーリアは微笑んでいるが、マルスは未だ考えている様子である。
 人々は何が起こっているのか理解に苦しんだ。突然現れた女性を女神と呼ぶ者、生死を彷徨っていた者が何事もなく歩き語っている様。その上、目の前には死体が横たわっているのであるから無理もないだろう。
 まるで幻想の世界へ迷い込んだ心地であったに違いない。
 だが、ガウトリッツだけは違った。短剣を砂に変えたのは、このエフィーリアだと確信していたのである。それ故…彼は真っ青になり震えていたのであった。
 そんなガウトリッツを、エフィーリアは険しい顔をして見つめて言った。
「ガウトリッツよ。汝は何をしようとしていたのか分かったか?そこで一緒に震えているプロヴィス当主と何をしようとしたのか。」
 エフィーリアはきつく言い放つと、今度はエルンストとクレンの二人を呼び寄せた。
「汝等、各密命を受け作成した書簡を王に差し出すのだ。」
 思いも掛けぬエフィーリアの言葉に、目を丸くして玉座に座していた王が口を開いた。
「大地の女神よ、その者達が何を…。」
 その弱々しい発言に、エフィーリアは溜め息を洩らして答えたのであった。
「原初の神に認められし者よ。エルンストは王子アルフレートにより、クレンはベッツェン公の命によって、ガウトリッツとプロヴィス家との関係を調べていたのだ。クレンはこちらへ書簡を運ぶ役目を受けてもいた。」
 エフィーリアがそう語った後、王の手元に書簡が渡された。それに目を通すや、王は驚きのあまり立ち上がったのであった。
「何ということ!民から集めた税を、リチェッリの公爵に横流ししていたとは!」
 周囲に動揺が走り、皆一斉にガウトリッツ等を見たのであった。
 当時、プレトリウスとリチェッリとの間には深い亀裂が入っており、国交も儘ならない状態であったのである。だがこの二人は、そのリチェッリの公爵と繋がりがあった。
「麦や宝飾の見返りに…純銀・シルク・乳香か…。どれも我が国では高値の付くものばかりであるな。」
 王は顔を顰め、書簡に目を通しながら呟いた。
 女神はそんな王を見て頷き、それからマルスへと視線を変えた。
「マルスよ。その柄の布を外し、真実を語る時である。」
 マルスにそう言った後、未だ夢覚めやらぬ人々を叱咤した。
「原初の神は大いに怒っておいでである。汝等は内情を知りながら、誰一人として正そうとはしなかったからである。」
 女神の言葉に、貴族である者達は反論した。自分はそうではないと、彼らは口々に捲し立てたのである。
 それらを聞いて、女神は初めてその怒りを顕にしたのであった
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