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SNOW ROSE
騎士の章
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その首筋には吹き矢が刺さっていたのである。
「誰だっ!」
 次に声を上げたのは、クレンであった。彼はそっと柱の影から立ち去る人物を見逃しはしなかった。
 だがその者は足が速く、広間の外へと逃げられてしまったが、クレンはそのまま追い駆け捕まえようとした。だがしかし…クレンは直ぐにその足を止めたのであった。その必要が無くなったからである。
「こいつが何かしたのか?」
 クレンの前に現れたのは、重体であるはずのマルスであった。
 マルスは逃げようとした人物を連れて広間へ入ったが、その姿を見るや、人々は自らの目を疑ったのである。
 エルンストもまた、その中の一人であった。
「マ、マルス…君は…」
 彼は驚きの余り、声も出せない様子であった。
 それもそのはず…マルスが倒れているのを発見して抱き起こした時、マルスの胸…心臓近くに矢が命中していたのを確認しているのだ…。それは即死でも不思議ではない位置だったのだから…。
 そんな彼にマルスは微笑んで言った。
「エルンスト、お前は大地の女神に言葉を授かっただろ?だったら分かるはずだ。」
 そう言われたエルンストは、ハッとした。
「“捕えし者死する時、彼の者目覚め真実を語らん”か…。」
 唖然としている周囲の人々には、彼らが何を話しているのか理解できなかった。
 傍にいたガウトリッツも然りである。故に、彼は意味も分からず喚き立てた。
「よくもそのような戯言を!お前等は我々を落としめるため芝居をうったのだな!そうでなくば、何故その男がここにいるのだ!そうだ、お前達が我々を妬んで画策したに相違ない!」
 まるで子供が駄々を捏ねているようであった。
 王はそんなガウトリッツを見て、哀しげな顔をして諫めた。
「ガウトリッツよ。目の前では人が死んでいるというに、自らの言い訳しか並べぬとは…恥を知るがよい。汝に王の資格は無い!」
 そう言われたガウトリッツは暫らく茫然としていたが、次にはそれが怒りへと変わった。そして、あろうことか、腰に差していた護身用の短剣を抜き、父王に向って切り付けたのであった。
 それを見ていた家臣達は慌てふためき、エルンストらは王を護りに前に立ったが、それらはさして意味を成さなかった。
 ガウトリッツの短剣が、刹那に砂と成り果てたからである。
「親であり、主人でもある者に刄を向けるとは…何ということか。」
 どこからともなく、女性の声が響いてきた。皆、その声の主を探してみたが、全く見つけることは出来なかった。
 ただ一人、エルンストだけはその声を誰の者か知っており、その場に頭を垂れて言った。
「大地の女神エフィーリアよ!」
 エルンストの呼び掛けに答えるように、エフィーリアは王の前に姿を現わしたのであった。
 エフィーリアは先ず、跪くエルンストに向って言っ
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