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SNOW ROSE
騎士の章
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自らに都合の悪い者が居なくなったと、嘲笑っているようではありませぬか!」
 アルフレートの言葉に、ガウトリッツは顔を真っ赤にして怒ったが、反論してきたのはシェパールであった。
「アルフレート様。ご無礼とは存知ますが、何か証拠でもございますかな?たかが一介の民一人、なんということもありますまい。それに比べ、ガウトリッツ様は王座に着かれる身。そのような高貴な御方が、何故に罪など犯しましょうや?」
 さも馬鹿にしたように、シェパールは返答してきたのであった。アルフレートは怒りに震え口を開こうとした時、横に居たクレンが割り込んできたのであった。
「プロヴィス殿、あなたは勘違いをされておられます。」
「勘違い…ですと?」
 クレンの言葉に、シェパールは訝しげに顔を顰めた。
「ええ、そうです。現段階では、誰が王になるか判りません。“王座に着かれる身”と申されましたが、その言葉、何の論拠があって口にしたのでしょうか?」
 この国は世襲制ではない。王家の者しか王にはなれないが、それを決めるのは貴族院の役目である。
 プレトリウス王大典には<自らを律し、民の安寧を考え、礼を重んずる者、これ王の資質とし、これ無き者は王座に就くべからず>とある。他にも細やかな規定はあるにせよ、より良い国を築ける者が王となることに変わりは無い。
 このクレンの言葉に、さすがのシェパールも、口を閉ざさざるをえなかった。
 そんな中、探索中だったエルンストが戻ってきた。その後ろにはローゼン・ナイツの面々も顔を揃えていた。
「只今戻りました。」
 エルンストらは膝を折って礼を取り、王にこれまでの調査報告を行なった。その後、一人の男性を王の前に差し出したのである。
「この者が昨夜、マルス殿を射った者にございます。」
 周囲が騒めいた。しかしその中で一人、青い顔をして俯く者がいた。
 エルンストはそれに気付きつつも、話を進めたのであった。
「この者、名をエフェトと言い、プロヴィス家に仕える傭兵の一人にございます。」
 それを聞いて王は驚き、シェパールを見て問い質した。
 シェパールは青い顔をしたまま答えようとはしなかったが、そこへガウトリッツが声を出したのであった。
「そのような者、私は知りませぬ。きっとどこぞの農夫でも連れてきたのでは…」
「お前になぞ聞いてはおらぬはっ!」
 ガウトリッツの言葉を、王は雷のような声で制した。その声に、さすがのガウトリッツも真っ青になり、何も言えなくなってしまったのであった。
「こうなった以上、洗い浚い話しましょう。」
 静寂の中、凛とした声で言ったのは、捕えられていたエフェトであった。
 しかしその直後、エフェトは床に倒れこんでしまった。
「しまった!」
 エルンストは直ぐ様エフェトを抱え起こしたが、もう息絶えていた。
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