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SNOW ROSE
騎士の章
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から君宛ての書簡で、一月程前にアルフレート様の館へ届いていたのだそうだ。まぁ、懸命な判断だと思うよ。バタバタして渡す機会が無かったそうで、先程渡すよう仰せ遣ったんだ。」
 そう言い終わるや、エルンストは微笑を浮かべ、用は済んだとばかりに部屋を出て行ったのであった。
 エルンストが部屋を出た後、マルスは書簡の封を切り、月明かりの下で読み始めた。
 他愛もない内容ではあったが、それはマルスを元気付けるには充分な効力があったようである。
「何も変わってないな。ベルクの親父さんも元気そうだし…ん?以前働いてた二人が戻ってきてんのか。随分と都合良く戻って来たなぁ…。」
 何となくこの二人に嫉妬してしまい、マルスはそんな自分に苦笑いしてしまった。
 マルスは窓辺に立ち、月に付き従っている星々を見つめた。それは美しく壮大な光景であった。

 だが、そのような穏やかな月明かりの中…

―サクッ―

 何が起きたのか、マルスには理解出来なかった。
 彼はそのまま意識が遠退き、力なく床の上に倒れ込んでしまったのであった。
 隣の部屋でその音を聞き付けたエルンストは、直ぐにマルスの部屋へ駆け付けると、そこには胸を矢で射られたマルスが、月明かりの中に倒れていたのだった。
「マルスッ!」
 その光景を目にしたエルンストは、直ぐ様マルスのもとへ駆け寄ったが、まだ息があることを確認すると部屋を出で叫んだ。
「誰かいないか!早く医者を呼んでくれっ!」
 その声にクレンだけでなく、王城警備兵や小間使い達も駆け付けた。
「どうしたんですか!?」
 クレンがエルンストに向かって問た。
「マルスが射られたのだ!私は矢を射った者を捜し出すから、君は医師が来るまでマルスに付いていてほしい。」
 エルンストはそう告げるや、警備兵にアルフレートと王にこの事態を報告するように言い、その場から駆け出したのであった。

 翌朝、王は皆を大広間に集めた。だが、そこにはエルンストの姿はない。未だ城内外を“ローゼン・ナイツ”の仲間と共に探索中なのである。
「これはどういうことかっ!」
 王は大きな声を出して怒りを露にした。
 だが、そんな王を見ても、平気な顔をしている者がいたのである。
「父上、どうでもよいではないですか。たかが民一人、そう騒ぎ立てる程のことでは。」
「ガウトリッツ様、口をお慎み下さいませ。」
 そう言って微笑を浮かべているのは、ガウトリッツとプロヴィス家当主シェパールである。シェパールはガウトリッツに用があり、今朝早くに訪ねて来ていたのであった。
 王はこの二人を見て尚のこと不快となったが、その時は何も言わなかった。
 そんな王を察し、アルフレートが口を切った。
「兄上、不謹慎にも程がありましょうぞ。人一人殺されかけたのですよ?まるで
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