騎士の章
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に威張る必要があるのだ。」
このアルフレートの言葉を、マルスは生温いと感じた。しかし、現在の貴族の腐敗ぶりは民への礼節を軽んじていることも一因であることは否めない事実であった。
そんな折り、クラウディアが血相を変えて飛び込んできた。
「どうしたというのだ。合図もなく入ってくるとは…。」
明らかに不快を示したアルフレートであったが、次のクラウディアの言葉に驚いてしまった。
「王城より使いが参りまして、本日の晩餐に出席するようにとの書簡が届けられました。」
「何だと…!」
アルフレートは銀盆に載せられた書簡を掴み取り、直ぐ様それに目を通した。
「兄上にしてやられた!」
アルフレートは顔を歪めて立ち上がった。そこには、着たばかりの三人を招くようにと書かれていたためである。
それを聞いたクレンは、訝しげにアルフレートへ聞き返した。
「一介の民に過ぎない私達を、何故王城へ…?」
もっともな意見である。普段は彼らの様な民は入れないからである。爵位があっても直ぐ様入城出来る者は限られており、彼らが晩餐に呼ばれるのは異例中の異例なのである。
「簡単なことだ。兄は、君達と私を引き離したいのだろう。特にクレン、君はベッツェン公に仕える者だし、兄にしてみれば厄介な事この上ないからね。」
アルフレートがそこまで言うと、マルスが口を挟んできた。
「しかし…私達がこの館に着いたのはつい先ほどのことです。一体いつ王家に伝達が届いていたのでしょうか?」
それに答えたのはアルフレートでなく、隣に座っていたエルンストであった。
「恐らく、門にて気付かれたのでしょう。通行証を見た兵士にガウトリッツ様の息が掛かっていた…そう考えても良いのでは?」
エルンストのその言葉に、アルフレートは重い溜め息を吐いた。
「そうであろうな。どうせ兄も出席してるだろう。プロヴィス家当主と共にな。」
苦々しいといった風に、アルフレートは顔を顰めたのであった。
さて、一同は王城へ向かう支度を整えると、用意されていた馬車に乗り込んだ。荷物は邪魔になるため、馬車の屋根へ括り付けたのであるが、マルスの大剣だけは彼自身が持って乗り込んだ。
「マルス、それはあの時の剣だな?」
アルフレートは気になったのか、マルスに尋ねてきた。
「ええ、そうです。これは十二の時から持っているのものです。父の形見でもあるのですよ。」
その剣の柄には布が巻かれており、どのようになっているかは分からなかった。だが、鞘には多々の傷跡があり、かなりの年月を感じさせる風格があった。
「そうか、その剣で私を助けてくれたんだな。改めて礼を言う。あの時の剣捌きは見事であったな。まるで舞うような、鮮やかなものであった…。この地では見られない型だったが、どこで覚えたのだ?」
「故郷で
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