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SNOW ROSE
騎士の章
W
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には興味はあるが、それ以上にマルスの話しが真実であるのであれば、この危機的状況を幾分緩和出来ようというものである。
「そんなのはフェルティル大陸では珍しくも…。」
 そこまで言ったかと思ったら、マルスは口を閉ざししてしまった。
 フェルティル大陸とは、この大陸より遥か東に位置する大陸で、船で一年近くもかかる。そのため、かなり情報の乏しい大陸であるが、世界四つの大陸中で最も栄えているところとしては知られていた。だが反面、常時戦乱の絶えないことでも有名であった。
「フェルティル大陸…と言いましたか…?噂でしか聞いた事はありませけれど…。」
 クレンは何か聞き出そうとマルスに向き直ったが、マルスは失敗したという風に堅く口を閉ざしている。
「まぁ何でもいいさ。試せば良いだけの話だ。この話もアルフレート様の館に着いてからにしよう。」
 エルンストがそうマルスに助け船を出すと、クレンは仕方なげに「そうですね。」と言ったのであった。
 こうして彼らは、静かに館へ着くのを待ったのである。

 彼らがアルフレート王子の館に入ったのは、もう夕刻を過ぎてからであった。
 彼らが到着するや、直ぐ様客室に案内された。
 客室と言えど流石と言うべきか…それはとても広く、品の良い調度品などで飾られていた。
 三人はそれらを見ていたが、暫らくして若き王子が姿を現した。
「待たせてすまない。エルンスト、長旅だったな。まずは掛けてくれ。畏まる必要はないからな。」
 アルフレートはかなり気さくな人物のようである。
 エルンストは慣れている様子で、簡易的な礼を取って長椅子に座った。他二人もそれに倣い、簡単な礼を取って同じ長椅子に座ったのであった。
「マルス、よく来てくれた。あの時から、君を忘れたことはない。隣はクレンだね。噂はベッツェン公より聞いているよ。」
 アルフレートがそう話していた時、扉を叩く音がした。アルフレートが「入れ。」と言うと扉が開き、一人の老女がお茶を持って入って来たのであった。
「失礼致します。お茶をお持ち致しました。」
 老女はそのまま歩み出て、長机の上に菓子と茶器を置いた。随分と手馴れた様子である。
「ありがとう、クラウディア。いつもすまないね。」
 アルフレートはその老女に微笑みながら労いの言葉を掛けた。すると…その言葉に対し、老女はこう返したのであった。
「坊っちゃま、私は使用人にございます。これも仕事の一つ。礼を受けるようなことではございません。」
 この老女の言にマルスとクレンは仰天した。主人の礼に言い返すなど、なんとも大それたことであるからだ。ただ、エルンストだけは笑いを堪えている様子であるが…。
「婆やには適わない。もう坊っちゃまは止してくれと言ってるじゃないか!」
「いいえ、坊っちゃまは坊っちゃまでございます
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