鍋は冷やしてからが本番なの
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ここは駅に程近いアパート。
4月から社会人生活を始めた私の家だ。
「 ねーランまだー? 」
「 まだ野菜すら切ってないわよ 」
「 じゃあ私がきってあげるー 」
「 それには及ばないわ。結はそこで私の料理が完成するまでひとりジェンガしてて 」
「 はーい 」
1LDKの窓から見える夕焼けは、まるで空が燃えているようだ。
「 ランちゃんの手料理を食べられる事を光栄に思うよー 」
「 急にどうしたの?どこかに頭でもぶつけた? 」
「 へへっ、照れてるランちゃんも可愛いから私的にはOKだよっ! 」
「 照れてないッ! 」
「 相変わらずデレちゃって〜もう! 」
「 ...うぜぇ。 」
社会人になって何か変わったかと言われれば、いろいろと挙げる事はできる。
...しかし、変わらなかったことのインパクトと言うか印象というか
とにかく、結のせいでせっかくの新生活に新鮮味がないのである。
それはそれで嬉しいことなのだが、なんかこうもっと、なんていうか...ねぇ?
「 ランちゃんおーなーべーまーだー? 」
「 鍋ならいくらでもあるわよ。...そうね、この鉄製のなんてどうかしら? 」
そう言って私は結に鉄鍋を手渡す。
「 わーい!美味しそうなお鍋だー! ...ってバカ!こんなんかじれるかっ!! 」
「 大丈夫。あなたならいけるわ 」
「 その信頼が怖い!! そして真顔!! 」
「 私を信じて。さぁ、口を開けなさい 」
「 いーやーだー! 」
そして部屋の隅っこにあるカーテンに隠れてしまう。
「 あと1時間で完成よ 」
「 え?そんなにかかるの?さっき野菜は入れてたし、お肉も火が通ったでしょ? 」
「 何言ってるの?お鍋は冷やしてからが美味しいんじゃない 」
「 What's!? 」
「 なんで英語? 」
「 冷たいお鍋なんて食べたくないよー!こんなに寒いのに! 」
分かってないなぁと、私はお鍋から白菜を一切れつまみ結に渡す
「 食べてみて 」
「 うん 」
鍋の火を止めてからそんなに経っておらず、まだアツアツの白菜だが、結には関係ないらしい。美味しそうに白菜を租借している。
「 おいしいね!さすがランちゃん 」
「 不味いと言われるつもりはないわ。...さて、今の味を忘れないようにね? 」
「 わかった! 」
-----1時間後-----
「 な、なんだとぅ!? 」
「 どーお? 」
一度冷ました鍋をもう一度温めてから結に食べてもらった。
その一言目がこれである。淑女の風上にも置けない奴め。
「 染みこんでるッ!! 白菜に、お豆腐に、ネギに。スープのうまみが完全に!
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