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夢の終わるその日まで
√明久
始まりの日
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えているぞ」
そう雄二が言った。一瞬、なんで雄二が転校生の名前の漢字を知っているのかと思ったけど、雄二はクラス代表だから先に先生に知らされていたんだろう。さっきも、これといって騒いでいたわけでもなかったし、無津呂さんが来ることを知っていたに違いない。
「あ、そうだったか?すまない、無津呂。代わりに書いてくれ」
「はいっ」
無津呂さんの名字の漢字は言われてみれば「むつろ」って読めるけど、いざ漢字で書けって言われると、初めて見るような組み合わせの漢字を使った苗字だ。これは間違えても仕方がないかも……。
「そうだ、この漢字だ」
それにしても随分といい加減な先生だな、といってもこれが僕達の担任西村先生(通称:鉄人)なのだから、今更僕たちがなんと言おうと最低この1年間はこの先生の生徒なのだ。
「可愛い子の名前くらいちゃんと漢字で書けるようにしてあげればいいのに。僕だって無津呂さんの名字かけるよ!」
そういっていつだったか配られたプリントの裏に書いてみた。
「おい、明久……。鉄人と同じ間違いしてっぞ」
「えっ?」
「そこ、うるさいぞ。静かにしろ!!」
「「はい」」
雄二の所為で怒られた。多分雄二も僕の所為で怒られたと思っているだろう。顔にそう書いてある。
「改めまして無津呂依子です。身長は小さいけど、小学生じゃないです」
本人も言っていたように、身長は見たところ140pくらいで高校生の割には小さめ。でも小さい分、フランス人形のように華奢で可愛らしい。僕らが大好きな女の子の理想像だ。
「じゃあ無津呂は適当に、空いている席に座ってくれ」
「卓袱台なんです?」
「ああ、まあ詳しいことはこのクラスのバカどもに聞いてくれ」
はあ、と少し困ったような顔をしている。確かに僕たちだってこんな教室が存在するなんて思ってもいなかった。けれども、通っている内に慣れてくる。今では普通の椅子に違和感さえある。
『こんな美少女が我がFクラスに転校してきてくれて感謝ですぞ!』
「ですぞ、ってなんですぞ?」
『そうそう、それでいいんですぞ!!』
席に移動するまでに他の奴らにやたらと話しかけられ、それを律儀に、楽しげに一人ずつ返答してあげていた。その様子を見る限り、フレンドリーな女の子なんだろうということがわかる。僕も仲良くできるかな?
『こんな可愛い生き物と喋れて生きていてよかったでござる』
「ござるですぞっ」
『うひょおおおっ。あの生き物本当に同じ人間か?!可愛すぎるぅう』
いつの時代の秋葉原だよ、ってついついツッコミを入れたくなるようなクラスメイトだけれど、僕はあえて関わらない。関わったことによってこいつらと同じ人種だと思われたら死にたくなる。無津呂さんにそんな勘違いされたらもう僕の人生は終わりだ。
『華奢で可愛い、顔も可愛い、最高の美少女だ
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